後飾り祭壇の並べ方は?自宅での設置場所の選び方から片付け方法まで
葬儀・火葬を終えて自宅に戻ったあとは、遺骨や仮の位牌などを「後飾り祭壇」に安置し、故人の供養をおこないます。
あまり聞きなじみのない「後飾り祭壇」とは、一体どういうものなのでしょうか。
よく知らないまま、祭壇にさまざまなものを並べてみようとすると、「どこに何を置けばよいのか」「正式な並べ方はあるのだろうか」などと悩んでしまうでしょう。
ここでは、後飾り祭壇の並べ方、自宅での設置場所、祭壇を飾る期間、片付けの方法について簡単に解説します。
後飾り祭壇とは
後飾り祭壇は、 遺骨や仮位牌を安置しておく、仮の祭壇のこと です。
設置する期間は、宗旨によって日数が異なりますが、一般に「忌明けまでの間」とされています。その間、祭壇は故人の供養や、弔問客のお参りのために用いられます。
祭壇には遺骨・遺影写真・仮位牌(白木位牌)を安置することが基本で、そのほかに供養のために必要な道具やお供えを並べます。
後飾り祭壇には、2段と3段のタイプがあります。サイズは商品によって異なりますが、高さが45~70cm、幅が60cm〜90cm、奥行きが45~75cmあたりが主流です。
後飾り祭壇の設置は、火葬後に自宅でおこないます。後飾り祭壇が葬儀のプランに含まれていれば、葬儀社が設置してくれます。もし、プランに含まれていなければ、後飾り祭壇のオプションを選択することで葬儀社に設置してもらえます。
一方、祭壇や必要な道具を、自分で用意することも可能です。その場合は、自分で宗旨に応じた道具を用意し、並べる必要があります。
【宗教別】後飾り祭壇の自宅での並べ方
後飾り祭壇の自宅での並べ方について、宗教別に解説します。
後飾り祭壇の並べ方は、宗旨・宗派により異なります 。ただし、同じ宗派でも、寺院の考えや地域のしきたりによって異なることがあります。
ここでは、仏式・神式・キリスト教式の一例をご紹介しますが、詳しい並べ方を知りたい場合は、菩提寺・氏神神社・教会などへの確認をおすすめします。
仏式の並べ方
仏式の後飾り祭壇には白木の祭壇を用います。白木でない場合は、白い布をかけます。
並べ方に厳密な決まりはないのですが、基本はあります。祭壇が2段と3段の場合で、並べ方が異なります。
〈並べ方の基本〉
- 祭壇2段の場合……上段に遺骨と遺影、仮位牌
- 祭壇3段の場合……上段に遺骨と遺影、中段に仮位牌
下段には、線香・ロウソク・鈴・お花・お供え物を並べます。祭壇の前に台を設置してこれらの仏具を並べてもかまいません。
浄土真宗では、本尊を祀る場合があります。また、水や仏飯をお供えしないのが正式です。
仏飯や水は毎日取り替え、果物・お菓子・生花もいたむ前に取り替えましょう。故人が好きだったものをお供えしてもよいです。
49日の忌明けまでは、できるだけ毎日ロウソクに火を灯し、線香も絶やさないようにします。
なお、黒いお盆(切手盆)を用意し、その上に焼香鉢・線香立て・巻線香・おりん・りん棒・消し壷などを置いておくと便利です。弔問客が来たとき、このお盆をスッと差し出せば、スムーズにお参りしていただけます。
神式の並べ方
神式の後飾り祭壇は、〈仮霊舎(かりみたまや)〉と呼ばれます 。白木で作られた八足の祭壇(片足に4本ずつ脚をつけた台)を用いるのが正式です。祭壇の下には菰(こも)を敷きます。
八足を用意できない場合は、仏式と同じ祭壇を使ってもよいでしょう。白木でない場合は白布をかけます。
神式では、火葬後、葬儀が無事に終了したことを神様に知らせるための「帰家祭(きかさい)」という儀式を行います。そのため、火葬後、自宅に戻る前に祭壇を準備しておく必要があります。
〈並べ方の基本〉
- 上段…遺骨と遺影
- 中段…霊璽と榊
- 下段…三宝(さんぽう)にのせた瓶子・水玉・皿と玉串(紙垂を付けた榊)、ロウソク
下段に置いた瓶子にはお神酒を、水玉には水を、皿には洗米と塩をお供えします。
遺影は祭壇の前に置きます。
キリスト教の並べ方
キリスト教徒であれば、 自宅に祭壇があることが多い ため、新たに後飾り用の祭壇を用意する必要はありません。用意する場合は、小さなテーブルに白布を被せて台を作ります。
キリスト教式の後飾りには、特に決まりはありません。上の段には十字架や遺骨・遺影を置き、最下段に聖書、パン、お供え物、生花、ロウソクなどを並べるとよいでしょう。
後飾り祭壇の自宅での設置場所
後飾り祭壇を設置する場所は、 仏間にある仏壇の前や横であることが一般的 です。まだ仏壇がない場合は、部屋の北側か西側がよいとされています。
床の間の近くに設置する場合は、床の間の前に置きます。
ただし、近年の住まいには、仏間や床の間がない場合が少なくありません。この場合、居間やリビングに設置しても問題ありませんし、特に方角にこだわらなくてよいです。
1ヶ月半ほどの間、設置することになるため、日常生活の妨げになる位置を避け、供養しやすい場所を選ぶことが大切です。
かならず気をつけていただきたいのは、遺骨の状態が悪くならないようにすることです。そのため、直射日光があたる場所や湿気の多い場所は避けましょう。
ほかにも、可能であれば、
- 人の出入りが多い部屋の入り口は避ける
- 線香を焚くので、風通しがいい場所を選ぶ
- 粗末にならないように部屋の上座に置く
- 弔問客がお参りしやすい場所にする
といったことに気をつけるとよいでしょう。
後飾り祭壇を自宅に飾る期間
後飾り祭壇を自宅に飾る期間は、忌明けまでとされています。 仏式では49日法要、神式では50日祭、キリスト教では1ヵ月後の追悼ミサや昇天記念日が忌明けの日となります 。
その後の自宅での供養は、各宗旨にしたがって仏壇、あるいは祖霊舎(信徒壇)や家庭祭壇でおこなうことになります。
自宅に仏壇などがない場合は、あらかじめ忌明けの日までに準備しておきましょう。
後飾り祭壇の片付け方法
ここからは後飾り祭壇の片付けについて、簡単に解説します。
役目を終えた祭壇は、 自治体の回収ルールにしたがって処分するほか、葬儀社に回収してもらうことが可能 です。
とくに仏式の場合は、初盆の法要のときに精霊棚(しょうりょうだな)として用いることができるため、保管しておくと便利です。段ボール製であることが多いため、湿気に気をつけて保管しましょう。
また、白木の仮位牌は、49日法要の際、故人の魂が本位牌に移されるため不要となります。不要となった仮位牌は、寺院でお焚き上げをしてもらうことになります。
では、詳しくみていきましょう。
後飾り祭壇を処分
後飾り祭壇を処分する方法には、 「ゴミに出す」と「葬儀社に回収してもらう」 の2通りがあります。
必要なくなった後飾りは、お住まいの自治体のルールにしたがって、ゴミに出すことができます。
ただし、「供養につかったものをゴミに出すことに抵抗がある」という場合は、葬儀社で回収してもらうこともできます。利用した葬儀社に連絡してみましょう。
自分で用意した場合は、葬儀社に処分を依頼すると、かえって費用がかかってしまうかもしれません。場合に応じて、処分の方法を決めましょう。
ほかに、寺院で供養してもらう、地域によっては精霊流しに持っていく、といった選択肢もあります。
後飾り祭壇を保管
故人が亡くなって初めて迎えるお盆(初盆)の際、遺影やお供え物を置く精霊棚として、祭壇を 再利用 することができます。49日法要が済んだあとも、祭壇を保管しておくとよいでしょう。
葬儀社であつかう後飾り祭壇は、以前までレンタルが主流でしたが、現在はほとんどが買い取り式となっており、返却する必要がありません。
返却の必要がない祭壇は、多くが組立式か、折りたたみが可能な作りです。自宅でも小スペースで保管することができ、必要なときに出して再度、利用できます。
白木位牌はお焚き上げ
白木位牌は、49日法要の時期に漆塗りの本位牌に置きかえられるため、 不要 となります。
不要となった位牌は、49日法要のお勤めを頼んだ僧侶に引き取っていただき、お焚き上げをしてもらいましょう。
まとめ
後飾り祭壇は簡易な祭壇ですが、故人が亡くなってまもない間、何度も手を合わせる場所になります。仮の祭壇とはいえ、弔問を受けるときや、法事を自宅でする場合にも使用する、大切な場所です。
誰でもお参りしやすい場所に設置し、毎日線香を絶やさず、粗末に扱わないようにしましょう。
故人を思いながら祭壇のお供え物を新しいものに取り替えたり、手を合わせたりする毎日のおこないが供養となります。このおこないが、故人を喪った悲しみを少しずつ和らげてくれることでしょう。