仏壇なしで遺影写真のみでも供養はできる?省スペースでの供養について解説

仏壇なしで遺影写真のみでも供養はできる?省スペースでの供養について解説

近年、「住宅が手狭」といった、さまざまな事情により、自宅に仏壇を置かないケースが増えています。このようなケースでは、故人の近影をうつした遺影写真に向かって、毎日お参りをしたり、お供えすることも珍しくないようです。
しかし、従来の供養とのちがいから「遺影写真を置くだけで故人の供養をつとめることがはたして可能なのだろうか」と不安感をもつ人もいることでしょう。

この記事では、仏壇を置かない選択をしたときの供養の方法について、簡単に解説します。
自宅に仏壇がない場合、

  • 遺影写真のみで供養ができるのかどうか
  • その場合、位牌はどうするのか

といった疑問にお答えします。


仏壇なしで遺影写真のみでも供養はできる

まず、伝統的な先祖供養をおこなうためには、どのようなものが必要なのでしょうか。
供養のために必須とされてきたものには、仏壇・位牌・仏具などがありますが、実は、そのなかに 遺影写真は含まれません

仏壇は本来、各宗派の信仰対象である本尊(ほんぞん)や、故人の魂がこめられた位牌を自宅でまつるために持ち込まれた、お寺の本堂のミニチュア版です。
つまり、仏壇の役割は、故人や先祖の居場所です。

供養する側からみれば、仏壇の前で手を合わせることにより、悲しい気持ちを整理したり、故人と対話し、日常の感謝をすることができる場となっているのです。
極端にいえば、供養する側のこのような行為と同じことは、供養する気持ちがあれば、仏壇がなくても可能であるといえます。

一方、遺影写真は位牌とちがい、宗教的な儀式をおこなって魂が込められるものではないため、宗教的な意味をもちません。
遺影を飾る期間にも決まりがなく、一般的には火葬後に後飾り祭壇に置き、後飾りがしまわれる遺骨埋葬のタイミングで、飾る期間を終えます。

しかし、宗教的な意味合いがないとはいえ、故人に「近くで見守っていてほしい」という気持ちから、早く片付けてしまわないで、いつまでも遺影写真を飾っておきたいと思う人は少なくないでしょう。
日常的に遺影写真を飾ることの役割は、故人が生きていたことを視覚で確かめることによって、遺族の心の中に、故人の居場所を置くことなのです。

次に、遺影写真とともに位牌を置く場合と、置かない場合について、みていきましょう。

仏壇は置かないが位牌は置きたい場合

仏壇はお寺の本堂の代わりでしたが、位牌は、故人の魂がやどる依代(よりしろ)です。遺影写真とは異なり、宗教的な儀式をへて、故人を象徴するものとなります。
なお、浄土真宗のように、位牌を不要とする宗派もあります(代わりに、過去帳や法名軸を置きます)。

自宅で気持ちよくお参りできる環境を設けられるのであれば、仏壇なしで位牌を祀っても問題ありません。大切なのは故人を偲び、感謝する気持ちです。

ただし、僧侶から戒名を授かった場合は、基本的に位牌に戒名を彫り、仏壇に安置して供養する従来のかたちが推奨されます。そのため、 戒名をいただいたお寺には、仏壇を置かない(置けない)ことを必ず事前に話し、理解を得ておきましょう
なお、俗名(生前の名前)を位牌に彫ることも可能です。

位牌や遺影は、リビングなど日常的に目に触れやすいところに飾るとよいでしょう。毎日お参りすることができ、家族や親族が訪ねてきたときにも気軽に手を合わせられます。
位牌の置き場所を決めたら、お参りするときに見下ろさない高さにして祀ります。布や台などを敷いた上に祀り、直置きにならないようにするのが基本です。

配置に明確な決まりはありません。
仏壇に遺影写真を飾る際には、本尊の前に置かないという注意点がありますが、仏壇がないケースでは、位牌と遺影写真の前に、お供え物や線香などを供えるスペースを確保するとよいでしょう。

近年は、伝統的な位牌と異なるクリスタル製や、木目をあえて見せる木製のものなど、洋風の住宅にあわせたモダンなデザインの位牌もあります。コンパクトでおしゃれなミニ仏壇や、手元供養などと合わせて、新しい供養の方法も視野に入れてみましょう。

位牌

仏壇も位牌も置かない場合

仏壇も位牌も置かない場合、単純に遺影写真だけを置いて日々のお参りをすればよいのでしょうか。
このようなケースに対し、近年、 仏壇や位牌に代わるものとして、ミニ骨壺・遺骨ペンダントといった手元供養や、供養台などが提案されています
供養台は、手元供養をするための台で、写真やミニ骨壷、小型のモダン位牌などをあわせて飾ることができます。普段の生活に馴染むデザインで作られているのが特徴です。

他に、写真のフレームをインテリアの一部として考え、薄いピンクや紫などのパステルカラーをベースにした額縁を選ぶことも可能です。色合わせ次第で、家族の生活空間になじませることができます。
デジタルフレームを使って、複数の写真を映像のように流すことも選択肢の1つです。

仏壇や位牌がない場合の法事について

仏壇や位牌がない場合、自宅で法事をおこなう人はあまり多くないでしょう。

49日法要に仏壇が間にあわない場合は、仏壇なしで法事をおこなうことがあります。このような場合、 あらかじめ僧侶に仏壇がないことを伝えておきます
仏壇や位牌を置かない場合も、同様に僧侶に伝達しておくのが無難です。

49日法要より後は、節目ごとにお寺で供養をする人、位牌を菩提寺に預けて永代供養をお願いする人もいます。
仏壇はお寺のミニチュア版ですので、法要を自宅の仏壇ではなくお寺でおこなうことを特別に問題視する必要はありません。

他に、葬祭ホールをはじめ、ホテル、料理屋、霊園の施設などで法事をすることも可能です。
これらの施設やお店では、参列者の人数や予算に応じて部屋の規模をえらぶことができ、設備も整っているため、遺族にとっては事前の準備などの負担が軽くなるというメリットがあります。駐車場などもあるため、参列者にとっても便利です。

仏壇なし・遺影写真のみが増えている理由

仏壇がないケースには、さまざまな理由があります。
住宅事情、家全体の雰囲気にそぐわないという問題、仏壇の手入れをする人の高齢化のほか、宗教にかかわる理由もあります。

さまざまなライフスタイルの広がりとともに「仏壇を置かない」という選択が増えています 。しかし、このことは決して「仏壇が必要ない」「供養の規模を縮小する」ということとイコールではないようです。
省スペースでの供養を考えるケースでは、むしろ、何らかの近接した事情と、従来の供養のあり方を天秤にかけ、「これまでと同じ形で仏壇を置かなくてもよい(のではないか…)」と葛藤していることが少なくないのです。

仏壇を置くスペースがない

現代では、住まいのスペースにより仏壇を置けない家庭も増えています。
特に、マンションやアパートなどでは、和室がないことも手伝い、仏壇用のスペースを確保することが難しいようです。

現状、仏壇の大きさには地域差があり、都市化が早く進んだ関東では、 昔からやや小さな箱型の仏壇が主流 だったようです。
このことを考えれば、住宅事情によって仏壇が縮小化することは今に限ったことではないと言えます。

部屋の雰囲気に合わない

洋風の部屋や間取りの住宅に住んでいる場合、 インテリアと仏壇が合わない という悩みがあります。
家を新築する時に仏壇のことまで考える人は、あまり多くないでしょう。もし、新築時に将来、仏壇をどうするのかということに思い至ったら、家族と仏壇のことについて話してみましょう。

リビング

手入れができない

仏壇の世話をしていた人が高齢になり、施設などに入居した場合、もともとある仏壇の手入れの方法がわからず、手入れができなかったというケースもあるでしょう。
掃除やお花の水換え、香炉にたまっている灰の掃除など、手入れするところは複数あります
仏壇の規模を小さくして施設に持ち込むことも場合によっては可能なようですが、あまり多くありません。

宗教上の理由

特定の宗派を持たないケースや、 夫婦やそれぞれの実家の宗派が違うことで起きるトラブルを避けるため に、仏壇をもたないことを選択するケースがあります。

仏壇なしで遺影写真のみにするとき注意したいこと

仏壇を置かず、遺影写真を飾るときには、いくつか注意点があります。
それぞれ確認しましょう。

線香やお供え物を飾り供養の心を忘れない

「故人に対して植物や香、花を供える」という風習は、仏教に限らず、ほかの宗教でも見られるものです。
日常的に目につく場所に故人の写真を飾り、日々、お線香やろうそくをあげたり、語りかけたりして供養の心を忘れないようにしましょう

仏教の場合は、特に「三具足(みつぐそく、あるいは、さんぐそく)」という供養に必要な仏具があります。「香炉(こうろ)」「燭台(しょくだい)」「花立(はなたて)」を1セ
ットとします。
お線香には、今ではお香として、香りも見た目もおしゃれになったものが多くあります。
無理なく、今の生活に合ったものを取り入れてみましょう。

家族の承諾を得る

仏壇を置かない選択をした場合は、1人で決めず、 家族に事情を話して理解を得ましょう 。位牌を置かないことは宗教にも関わってくるため、特定のお寺に関係がある場合は、こういったことも含めてさまざまな方面に相談する必要があります。
後にトラブルに発展しないためにも、大切なことです。

宗派を確認する

宗派によっては、 遺影写真の飾り方が決められていることもあります
例えば、曹洞宗では遺影を南向きに置く、真言宗では拝む方向の延長線上に宗派の総本山が来るように飾る、といった決まりがある場合もあります。

しっかり固定する

写真が倒れたり落ちたりしないよう、しっかり固定しましょう 。特に、高い位置に吊るす場合は、地震などの思いがけない衝撃に耐えられるよう、対策をしておくことが必須です。
小さい子供がいる家庭では、誤って落としてしまうことにより壊れる危険性があるため、子どもの手に届かない場所に置くのがよいですね。

まとめ

ここまで、仏壇を置かない選択をしたときの供養の方法について、簡単に解説してきました。
遺影写真を礼拝の対象としたり、位牌の有無による違いを知ることで、供養についての認識が従来とは変わってきたのではないかと思います。

もし、家族やお寺の方向性と、自分が思う供養の形が違ってしまい、どうしても必要になった場合は、大きな仏壇にこだわる必要はないでしょう。コンパクトな仏壇は種類が豊富にありますし、手元供養を検討してみるなど、供養の方法はさまざまです。
今の自分たちに合った供養の方法を模索し、想いを話し合うことで、家族の合意を得ることが大切です。

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監修・奥山晶子
監修・奥山晶子
株式会社むじょう 編集者
冠婚葬祭互助会に従事し、その後おもだか大学名義で「フリースタイルなお別れざっし 葬」(不定期)を刊行。現在は葬儀や墓など終活関連の記事を手がけるライターとして活動中。2012年より2年間、NPO法人葬送の自由をすすめる会の理事をつとめる。主な著者に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』がある。