【インドの葬式】聖なるガンジス川への旅立ちはヒンズー教の儀式

【インドの葬式】聖なるガンジス川への旅立ちはヒンズー教の儀式

インドのお葬式の情報は少なくて、いったいどのようなものなのか気になりますよね。

インドは、日本の8.7倍もの広さに80億人以上の人が住む、世界一の人口大国です。そのため、地域や身分制度によってお葬式の形式も異なることがあります。

この記事では、インドの80%の人が信仰する、ヒンドゥー教の基本的なお葬式の流れや特徴をわかりやすく解説していきます。

また、インドのお葬式に参列する予定の方のために、お葬式のマナーも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

※地域により葬儀の作法は少し違う可能性があります。


インドのお葬式の流れ

インドでは、 人口の80%がヒンドゥー教徒 であり、そのためほとんどの葬儀はヒンドゥー教の慣習に従います。

ヒンドゥー教では、亡くなってから1〜2日ほどの短い期間に火葬されます。インドは暑い国なので、遺体の腐敗を防ぐためにできるだけ早く火葬するようです。

葬儀の儀式は、インド全体で様々な地域ごとにわずかに異なり、またカースト制度によっても異なる要素があります。

ここでは、基本的なインドのお葬式の流れをご紹介します。

お葬式

インドのほとんどのお葬式は、 自宅で行われます

参列者は、遺族や知人で、お葬式では僧侶がマントラと呼ばれる、心を落ち着かせるための短い言葉を唱えます。

インドでは、この後の火葬がメインで、お葬式は、短い時間で簡単に済ませるのが特徴です。

火葬

現在のインドでは、ヒンドゥー教の信者たちは通常、亡くなった際に遺体を火葬します。

一般的に知られているガンジス川での水葬は、主に火葬費用を捻出できない人や、子供、ヘビに噛まれて亡くなった人など、特定の条件下でのみ行われる儀式です

火葬場までは、親族が竹竿を組んで作った台の上に、布で包んだ遺体を乗せて、近親者が担いで運びます。

インドの焼き場の多くは河川沿いにあり、組み立てられた薪の上に川の水で清めた遺体を乗せて、枯れ葉やワラをかぶせます。その上に薪を乗せて、長男がマッチで火を付けます。

火葬はオープンスペースで行われるため、遺体が焼けていく様子は、誰でも鮮明に見ることができます。

火葬後に、男性はそのまま川で沐浴して身を清めます。これは、火葬式が不潔で汚染されていると考えられているためでもあります。

また、焼かれた遺体のにおいが、服や髪の毛に染み込むため、すぐに水浴びをするのかもしれません。

沐浴をしなくても、火葬に参加した場合は、火葬後できるだけ早くシャワーを浴びましょう。

遺骨を川に流す

インドのヒンドゥー教徒はお墓を作らず、遺灰や遺骨は河川や貯水池に流します 。よく知られるガンジス川は、聖なる川と呼ばれ、できればガンジス川に流してもらうことを願っています。

また火葬の際使われる薪によっては、すべて遺骨にできず燃え残ることがあります。これは、貧しくて十分な薪が買えない場合に起こります。

その場合、焼け残った肉の塊も、そのまま川に流されます。

通常の遺骨を流すまでの過程は、まず火葬が終わると、遺族や近親者などが骨を拾います。

熱い骨には、牛乳と水をまぜた液体やガンジス川の水をかけて冷やし、専用の袋に収めます。骨壷はありません。

この遺灰と遺骨は、すぐに河川や貯水池に流される場合と、火葬場のあるお寺や自宅でしばらく安置される場合があります。

いずれにしろ遺灰や遺骨は、お墓に入ることはなく、最終的に河川や貯水池に流されます。

ガンジス川

祖霊祭(シュラッダ)

火葬が終わると、遺族は10日〜20日間喪に服します。この期間は 祖霊祭(シュラッダ) と呼ばれます。

シュラッダは、先祖に敬意を表すために行われるヒンドゥ-教の儀式で、お葬式でも、先祖や親へ感謝をささげる期間となっています。

シュラッダ期間中に、喪主が頭に布を巻く儀式や、親族や友人を食事に招くなどの行事が行われます。

インドのお葬式の特徴

前章で述べたように、インドではお葬式というより、火葬やその後の喪に服す期間を合わせて、葬儀となります。

その特徴は、以下のようなものがあげられます。

  • 儀式は10日から20日間
  • 長男は丸刈り
  • 子供は火葬なし

順番に解説します。

儀式は10日から20日間

インドの葬儀の特徴は、お葬式、火葬の後に、10日から20日間の長い喪に服す期間です。

この期間、お酒やタバコ、肉食も禁止となり、 家から出ることもできません 。そのため、インドでは、近親者がなくなると、この期間会社もお休みを取ることになります。

長男は丸刈り

お葬式に際し、長男は頭を丸刈りにします。丸刈りといっても、すべて髪を落とすわけではなく、 後頭部に少しだけ髪を残します

これが葬儀の独特のスタイルで、この髪型を見るだけで、親を亡くしたばかりの人であることがわかります。

子供は火葬なし

ヒンドゥー教は、火葬が基本ですが、子供が亡くなった場合は、火葬せず、遺体を川に流すことがあります。

その他にも、以下のような場合は火葬が行われない場合があります。

  • 未婚の女子
  • 妊婦
  • 感染症患者
  • 事故で亡くなった人
  • ヘビに噛まれて亡くなった人

これらの遺体は、黄色い布に包まれて、重しを足にくくりつけて川に投げ込まれます。

しかし、焼け残った死体の一部を川に投げ入れることや、水葬の習慣は、インドにおける生活排水や工場排水などの水質汚染につながる問題となっています。

昨今インド政府は、インドの主要河川の水質浄化への取り組みをはじめています。近い将来、河川や貯水池へ遺体を流すことは禁止されるかもしれませんね。

インドのお葬式のマナー

インドのお葬式に参列する場合、知っておくと便利なマナーがあります。

  • 服装は基本白い服を着る
  • 香典は少額を封筒に入れて喪主へ渡す

ひとつずつ見ていきましょう。

服装は基本白い服を着る

インドのお葬式に参列する場合、特に決まった色の指定はありません。ただし、派手な色は避けて、 薄い色を選ぶのが無難でしょう

男性は上が襟付き、女性はインドの衣装であるサリーを着てくる場合がほとんどです。

ただ、ヒンドゥー教の火葬に参列する際は、白い服が基本となります。また頭は布で覆うことがあるため、大きめのハンカチを持っていくといいでしょう。

ハンカチ

香典は少額を封筒に入れて喪主へ渡す

インドの香典は、地域によって受け取らない場合もありますが、 渡すとしても少額 です。

香典袋はないため、封筒に入れて喪主へ渡します。

ただし、遺族の意向で香典を辞退する場合もあります。その場合は、お葬式の際に、辞退する旨のアナウンスが流れます。

よくわからない場合は、遺族に聞くのが一番いいでしょう。

まとめ

インドのヒンドゥー教の葬儀は、一般的には日本と比べて簡素で短時間に終わります。

ただし、火葬に参列する場合は異なり、遺体が焼けるまで見守ったり、一部の地域では遺骨を川に流す儀式にも立ち会うことがあります。

これは、日本人にとっては衝撃的な経験かもしれませんが、インドの人々の死生観を理解し、彼らの文化を尊重することが重要です。

異なる文化や宗教の儀式に触れる際には、相手の感情や信念に敬意を払い、共感することが大切です。

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監修・奥山晶子
監修・奥山晶子
株式会社むじょう 編集者
冠婚葬祭互助会に従事し、その後おもだか大学名義で「フリースタイルなお別れざっし 葬」(不定期)を刊行。現在は葬儀や墓など終活関連の記事を手がけるライターとして活動中。2012年より2年間、NPO法人葬送の自由をすすめる会の理事をつとめる。主な著者に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』がある。