広島県福山市に工場を持つ創業51年の棺桶メーカー、株式会社共栄(きょうえい)の社長・栗原正宗様にお話を伺いました。
私が共栄さんの工場へお邪魔するのは1年ぶり2回目で、会社の皆さんから溢れ出る人を大切にする心や心を込めて作り上げる職人魂が魅力的な会社です。そんな共栄さんの、人想いなものづくり・会社経営について詳しく迫っていきます。
※本記事では話し手の想いや温度のある言葉をそのままお伝えするため、栗原社長の親しみやすさの源である福山弁も残しております。
木の温もりを棺桶に宿す
前田:今日はお時間いただきありがとうございます。はじめに、共栄さんを知らない方へ簡単に会社のご紹介をいただけますか?
栗原:じいちゃんの時代まで材木屋をやっていて、それから棺桶を作るようになった会社です。
木ってやっぱり温かみがあるんよね。何十年、何百年と育った木を使って温かみのある棺を作るっていうのが共栄のやりよることだね。
共栄は奇抜なデザインの棺桶を日本で一番作っとる会社だという自負があって、それは親父(先代社長・現会長の栗原正樹様)がずっと商品開発をやってくれよったけぇ、技術がついていったんじゃと思う。
前田:起源は材木屋さんだったのですね。広島・福山という場所で棺桶を作る地の利があったのでしょうか?
栗原:材木がそうだったんじゃろうね。府中家具って有名じゃけど、そういうところの卸で材木屋やってたんですって。丸太をどーんと山から切り出してきて、それを「このくらいの机作るけぇこのくらいにして欲しい」と言われたように切って渡すような仕事で、その流れで棺桶屋に移っとるけぇ、土地としての利があったと思う。
「この人のため」から始まるものづくり
前田:あくなき商品開発をしている会社であるとご紹介をいただきましたが、棺桶の新商品を開発する上で大切にしていることは何ですか?
栗原:特定の「この人に合えばええなぁ!」ってところからスタートするんよな。自分のばあちゃんに使いたいとか。そんな感じでつくっていくけぇね。
前田:プロダクトを買う人・使う人の顔がどれだけ鮮明に浮かぶのか、とても大事ですよね...
栗原:わかる。前田くんらがやってる「葬想式」はWebサービスじゃけど、ものづくりじゃけぇ同じだと思う。じゃけぇ自分だったらばあちゃんに使いたい棺、じいちゃんに使いたい棺、親父に使いたい棺ってところからスタートして、キーワードを探していく。
とことん1人の事を考えんことには変わらんね。めちゃめちゃ思うんよな。売れそうじゃけぇ作るとかはあんまり考えていないかも…
前田:特定の1人の為だけに作り込んではじめて、顔の見えない大勢にも届くものが生まれる訳ですね。勉強になります。
前田:作り方について伺いましたが、この作り方に根ざして、どんな売り方をされているのかお話聞かせていただけますか?
栗原:ある時、良いものをちゃんとした価格で販売していこう!っていう方向に自分の中で振り切ったんじゃ。その時からマーケットインよりプロダクトアウトっていうのが心の中にずーーっとあって、「共栄の発するメッセージはこれなんだ」って拘ったらこの金額になってしまったけど、世に出してみよう!みたいな。
喪主さんとかご遺族の方に共栄の想いを伝えようって作っていくけぇ、コストよりもデザインやディテールに拘りたくなったりする。もちろん一応はコストも頭に入れておくけど、細部にまで拘っていくけぇ、結果思っていたより高くなってしまった、みたいなのばかりじゃけど。そういうので、商品開発していきよるけぇ、失敗も多いよ。
(棺桶の紹介をしてくださる栗原さん)
(棺桶の紹介をしてくださる栗原さんと従業員さん)
葬儀社さんと共に栄えたい
栗原:さっきの売り方の話の延長で、昔から共栄は九州から西日本を中心に営業させて回ってた会社だから、沢山、素敵な考え方の社長や会社があって、そういったお客様に共栄という会社は育ててもらってここまでこれたけぇ、一緒に頑張ってこれからも役に立てたらええなぁって思って営業会議では皆んなで、葬儀社さんの素敵な例の話を共有するようにしとるよ!
そんで違う地域の担当の営業マンが分からない事や調べて欲しいことや気にしてたりしたら、各営業が持ってる知識を共有するようにしとるよ。
前田:それこそ共に栄える、共栄ですね。お客様とのコミュニケーションで意識していることはありますか?
栗原:誠実、素直、嘘つかない。うちは検品もしっかりして99%完璧にして出荷しよるけど、絶対に不良は起こるんよ。材料が木じゃけぇ、湿度によっては棺桶の蓋が反ったりすることがある。だからあらかじめ100%ではないことも伝えるし、不良があったらすぐに届ける事も伝えとる。
あとは海外の工場から仕入れよったら、会社が進化するどころか現状維持でも結構しんどかったりするんよ。環境が変わるけぇ。(注:運賃の値上げ・原料費の高騰など、環境の変化が激しい)どうしてもの時には、お客様に価格が変わるお願いをする時もあります。
前田:100%ではないことを伝えた上で、不良があった時にすぐ対応するというのが事業者にできる一番誠実な対応ですね。
栗原:そうじゃなぁ。あとは共栄はサプライヤーと一心同体の気持ちでやっとるけ、中国の現場の一人一人の顔が思い浮かぶんよ、昔そこで働いとったから。
だからもし不良が来たら、国内でなおしてやろうやと、それをいちいち不良で突き返すとか、そんなことせずにやろうやと。親父の時からのスタンスなんやけど、これで値引きとか、返品とか絶対せんし、そういう持ちつ持たれつでやっていくようにしおるね。
前田:なるほど...素敵なお話です。私は「お客様に対して」という質問をさせていただいたのですが、棺桶を買ってくれる葬儀社さんだけじゃなくてサプライヤーのお話も出てきて、それだけ「共栄」の精神に根ざしてお仕事をされているんだなぁと...
“粋”ドリブンの組織づくり
前田:去年はじめて会社に伺った際に、入り口のウェルカムボードに私の名前を書いていただいて...オフィスにお邪魔すると皆さん起立してご挨拶をしてくださったのがすごく印象に残っています。日々、どのように社員さんとコミュニケーションをとっておられるのか、気になりました。まずは1日のはじめから終わりまで、栗原さんがどんな過ごし方をされて、どんな意識で従業員の皆さんとコミュニケーションをとっているのか、お聞かせいただけますか?
栗原:朝6時くらいに会社にきて、そしたら親父が先にきてコーヒー落としてくれとるけ、梅澤部長と俺と親父と三人でその日の細かい話をするんよ。よくない報告とかもあるけぇ、その時点で3人で話して、これはこう解決しようかとか、こういうチャレンジしようっていうのをやっとったら7時くらいからみんなが来出すんよな。
コーヒーを飲みながら、お笑いの話したりスポーツの話したり、無駄話をするんよ。無駄話なんだけどすごくええ言葉が出てきたりとか、プチ営業会議じゃないけども、みんなと話す時間がええなぁ。
8時から体操じゃけぇ、そこでみんなと顔を合わせて朝礼して、中国から来るコンテナを降ろして、そこからは自分の作業したり、会社の確認作業したり、現場に出たりすると17時になって、17時から自分のお客さんの仕事っていうことが多いかな。それで早く家に帰れたら息子と遊ぶし、19時半までに帰らんと息子が寝るけぇ(笑)
今日は早めに終わりそうじゃな~と思ったら18時とかに帰るんだけど、今日19時半過ぎそうだなと思った時は遅くまでやったりとか、振り切る。何をしよるかっていうと、note書いたり、統計を見よったり、営業マンの一人一人の今日の表情とかを思い出して困っとることないかなとか考えたり、もちろんミスっとったら注意しないといけんしね。
栗原:お客さんに従業員が立って挨拶する話はね、遠くから時間とお金を使って来ようと思って来てくれてるんで、ウェルカムの気持ちを伝えたいなっていうのは親父が社長の頃から言っておったね。
自分が入社する前から部長や課長や現場のみんなが工夫して徐々に作り上げてくれた文化じゃと思う。本当にこれ、すごいと自分らのことながら思うところがあります。
前田:そうなんですね。会長から受け継いだ素敵な文化が今も生き続けているんですね。
栗原:そうじゃなぁ。一回前田くんが来たときに行った雅山(がざん)っていう居酒屋さん覚えてる?
前田:覚えてます!
栗原:あそこが、俺の理想なのよ。コロナの時でもな、親父や友人らが気にかけて、たまに行くんよ。で、なんで行きよるんかなっていったら、やっぱりファンになっとるっというか。「つきちゃん(女将さん)の所、じゃけぇ」って言って行くんじゃけど。
味はもちろん美味しいし、あの店の感じがやっぱりええんよな。お店の暗黙のルールがあったりして、それもまた粋じゃ。会社でもあんな場所を作りたいなというのを思っとって。棺桶を販売しながら、そういうことが出来たら幸せじゃなって。
前田:なるほど...私ははじめて共栄さんを訪ねた時に歓迎していただいて、すぐにファンになりました(笑)
前田:会社のあちこちに格言の紙が貼られていますけど、それを見て会社のメンバーが思うことがあればいいな、ということで貼られているんですか?
栗原:そうじゃな。これは親父がずっとやってくれて、こういう言葉って去年見た時と、今見た時と、来年見るので違うんよな。
(壁紙を眺めながらお話しする栗原さん)
じゃけぇ、こうやって壁に貼っておくって大切じゃなって。偶発的にみるけぇ。これは親父が貼る時もあれば、従業員の子が持ってきたりして、親父が「それ、えーじゃないか!」とかって言って作って貼っとったりするんよな。トイレのやつとかもあれは部長らがどっかで見つけて、「これは粋じゃなぁ」みたいになって作ったんよね。粋なことが好きよね(笑)
前田:あれは粋ですね(笑)帰りに撮影させてください。
(共栄さんのトイレの張り紙)
(社員さんが張り出した壁紙)
棺桶屋の社長が語る“棺桶観”
前田:最後の質問になりますが、栗原さんにとって、お棺とはなんですか?
栗原:なんなんじゃろうな、かっこいいことは言えんけど、最期のプレゼントであり、これ入ったらもう会えませんよっていう境目になるものなんじゃないかと思うんよね。いいものを作りたいな~と思うのはそこなんじゃないかと思う。
前田:最期のプレゼント...
栗原:喪主からすると最期のプレゼント。もしも自分で自分の棺を買っておくという時代が来たとしても、自分の最期の買い物みたいななぁ。まとまりがあることは言えんけど。これは親父にも質問したかったなぁ。
前田:今度は会長さんにもインタビューさせていただきたいです。お忙しい中お時間いただきありがとうございました!
この取材の後、栗原社長から「偉そうに映る言葉を使っていなかったかな?」とご連絡をいただきました。サプライヤーやお客様である葬儀社さんにお世話になっていることを胸に留め、誠意ある振る舞いを心がけてらっしゃるからこそのご心配だったのだと思います。
そんな共栄さんの温かい言葉の温度をできる限りそのままにお伝えできるよう、筆を執らせていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
会社概要:株式会社共栄
住所:〒729-3111 広島県福山市新市町大字金丸438-1
お電話番号:0847−57−8001
公式HP:https://kyoei-casket.co.jp/
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