子供に死を教えるには?死の説明・向き合い方についての思索
幼い子供にとっての死とは、一体どういう事象なのでしょう?
おもちゃが壊れてしまうことやアリを踏み潰してしまうことと同じでしょうか。
死は、いつも一緒に遊んでいるペットや、優しい祖父母、大好きな親や、友達、そして自分にも、必ず訪れるものです。
生まれてはじめて身近な人の死に直面した子供は、その人死をどうやって理解し、受け入れていけばいいのでしょうか。
死は、宗教観やその人の死生観によって違いのある、大人にとっても難しい概念です。それを幼い子供に理解させることは難しいでしょう。
ですが、いつか訪れる大切な人の死でお子さんの心が壊れすぎないように。
大切な人の死を忘れることなく自身の日常を過ごしていけるように。
死に関わる言葉で誰かを傷つけてしまわないように。
幼少期に何らかの形で死に触れることは、お子さんの人生観を育む大切な経験となるはずです。
お子さんの大切な人に死が訪れた時は
必ずしも葬儀に参列させなくても良い
お子さんにとって大切な人が亡くなった時、お子さんの年齢や性格によっては、お子さんが遺族であったとしても通夜やお葬式に参列させることは必ずしも最善であるとは限りません。
死の意味もわからないのに、大人が大勢悲しんでいるお葬式の場に連れていくことは、お子さんのお別れの気持ちより恐怖が先立ってしまった結果、ただお子さんに怖い思いをさせてしまうただけに終わるってしまう可能性も十分にあります。
参列する意思が子供にあるか確認する
もしご両親の意向でお子さんを参列させたい場合でも、お子さんに参列の意思があるのか確認することは大切です。もし渋るようでしたら、無理に参列させるのは控えましょう。
葬儀がどんな場であるか説明する
お子さんが参列を希望した場合でも、お葬式がどんな場所であるか、どうしてみんなが悲しんでいるかや、怖い場所ではなくお別れの場所だということ、悲しくなったら泣いてもいいということなど、事前に説明してあげるとよいでしょう。
参列にそぐわない行動をとった場合、落ち着くのを待つ
お子さんによっては大人が悲しんでいるのを見て、不安から泣き出してしまったり、注意を引いて笑わせようとしたりする子もいます。
もしお子さんが参列にそぐわない行動をとってしまっても、無理に泣き止ませたり静かにさせたりせずに、一度退席しお子さんが安心するまで待ってあげてください。
葬儀後の心のケアを欠かさない
お葬式参列後しばらくしてからでも、お子さんが急に落ち込んでしまったり、夜眠るのを怖がったり、お肉などの食事を摂らなくなったりすることはよくあります。親御さんでしっかりケアしてあげるようにし、場合によっては専門家に相談してもいいですね。
死を教えるのに役立つ絵本
誰にとっても身近な「死」を伝える
死は、未来のある子供には、まったく関係ないように思えます。
しかし、現在においても妊娠初期の流産確率は8~15%です。今生きている人はみんな、産まれる前にその確率を踏まなかっただけにすぎません。これから大きくなるお子さんも私たちも、人生最初の死線をくぐり抜け、生きているのです。
そうして産まれたお子さんの誕生を祝福する気持ちには死を回避したことへの安堵も含まれているのではないでしょうか。
既にくぐり抜けた死の可能性をきっかけに、お子さんと死について話してみてはいかがでしょうか。
「命あるものにはいつか死が訪れること」「死はとても悲しいこと」「誰かの命に死が訪れても、他の命は続いていくこと」など、大人にとっては当たり前のことを子供にもわかる言葉で伝えてあげることが、お子さんが自分のことをかけがえのない存在だと知るきっかけになるといいですね。
その他、親御さんが大切に想っていた故人とのあたたかい思い出や、親御さんが故人の死をどうやって受け入れていったかなどを聞かせてあげたり、死をテーマにした絵本を読み聞かせてあげたりするのも良いでしょう。
悲しい死をまだ幼い子供に教えることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、死を悲しむのは、自分以外の人を大切に想うことの表れであり、お子さんが自分以外の人を想う気持ちも大切にできる大人に育つために必要な知識のひとつです。
おすすめの絵本 「うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん」
どんな年齢のお子さんにもおすすめの絵本として、『うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん』があります。うさこちゃんがだいすきなおばあちゃんを亡くし、悲しみの中でおばあちゃんに感謝とお別れを述べ、お葬式でのお別れの後も毎日おばあちゃんのお墓に花を供えることで、うさこちゃんの日常におばあちゃんの死を受け入れていくというストーリーの絵本です。
「大切な人の死」「悲しみ」「誰かの死の後も生きていくこと」を優しく描いている内容なので、大切な人の死に直面してしまい、落ち込んでいるお子さんにもおすすめの一冊です。
まとめ
みなさんは子供時代に大切な人を亡くしたことはありますか?その時のことを覚えているでしょうか。その人との思い出は覚えていますか。
もしなにも覚えていなくても、その人のことやその人の思い出は、人伝で聞いたり写真を見たりして、「もう覚えていないけど大切な人」として胸の内にいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
お子さんがいつか大人になった時、「覚えていようが覚えていまいが、その人のことをどれだけ大切に想うことができるか」を考えた時に、子供の頃から死と正しい距離感で向き合うことは重要です。
寿命通りにいくと、親は子供より早く死にます。お子さんが死と正しい距離感で向き合う為のサポートをすることは、子供より早く死ぬことしかできない親の勤めであると言えるのではないでしょうか。
大切なお子さんが大人になっても、大切な人の死を悲しみ受け入れられるように、親子にとっての「死との正しい距離感」を測ってみる機会があってもいいと思いますよ。