イギリスの葬式の流れや特徴、参列時に知っておきたいマナーを解説
「イギリスのお葬式ってどんなの」
「イギリスのお葬式で喪服は必要」
突然イギリスのお葬式に参列することになると、わからないことばかりで悩みますよね。
この記事では、イギリスのお葬式の流れや、特徴について簡単に説明しています。
また参列した際困らないために、知っておくべきマナーも解説していますので、イギリスのお葬式に参列する方や、参列する可能性のある方は、ぜひ最後までお読みください。
イギリスのお葬式の流れ
イギリスでは、 日本のようなお通夜はありません 。
遺体はそのまま病院で保管、または、葬儀会社の手配する車で葬儀屋の安置室へ運んで保管されます。
お葬式は、親族の都合で決められ、数日後から10日後に教会や葬儀場内のチャペルで行われるのが一般的です。
イギリスのお葬式の基本の流れは、以下のようになっています。
- 聖職者の話
- 賛美歌・聖歌
- 遺族の挨拶
- 哀悼の辞
- 埋葬の儀式
順番に見ていきましょう。
聖職者の話
イギリスの葬儀では、 聖職者によるお話があります 。
聖職者の呼び名は、宗派により異なり、カトリックは「司祭・神父」、プロテスタントは「牧師」です。
お話は主にキリスト教の信仰にのっとり、聖書から抜粋されたものが語られます。キリスト教では、人は死んでも復活すると考えられています。
そのため、死を嘆き悲しむというより、復活の日まで天国で穏やかに過ごせるようお祈りします。
賛美歌・聖歌
イギリスの葬儀では、 参列者全員で讃美歌や聖歌を歌います 。
キリスト教の集いや典礼で歌われる歌は、プロテスタントでは「賛美歌」、カトリックでは「聖歌」と呼ばれます。
よく歌われる賛美歌・聖歌を3つご紹介しておきます。
- 天なる喜び:エリザベス女王の国葬やサッチャー首相の葬儀で歌われた曲
- いつくしみ深き:葬式や結婚式でよく歌われる曲
- 主よみもとに近づかん:大ヒットした映画「タイタニック」の中でも使われた曲
賛美歌や聖歌の歌詞は式次第に印刷されているので、知らない歌であっても故人を想いながらできるだけ一緒に歌ってみましょう。
遺族の挨拶
イギリスのお葬式でも、 遺族による挨拶があります 。
ただし、日本のように涙の挨拶というより、故人とのエピソードを語ったり、故人の好きだった詩の朗読をしたりと、楽しかった時間を共有するものです。
ときにはユーモアも交えて、笑いが起きることもあります。
死は終わりではなく、将来的に新天新地への希望につながるものであるというキリスト教の死生観は、遺族の挨拶にも現れるのでしょう。
哀悼の辞
追悼の辞では、故人の生い立ちや人柄を振り返る、写真のスライドショーなどが流されます 。
スライドショーを見た後には、葬儀ディレクターにより、故人が亡くなるまでの歴史が語られたり、故人が好きだった音楽が流されたりします。
埋葬の儀式
お葬式が終了すると、土葬の場合は棺が墓地へ運ばれ、そこで埋葬の儀式が行われます。
埋葬の儀式では、まず深く掘られた土の中に棺がロープなどで下ろされます。
その後、聖職者による聖書の読み上げです。このとき、参列者も全員で一緒に故人の冥福を祈ります。
最後に棺の上に花を置いて、聖水をかけて終了です 。
イギリスでは埋葬の儀式のとき、遺体と最後の対面をすることはありません。棺には故人の顔を見ることができる窓がないのが一般的です。
イギリスのお葬式の特徴
イギリスのお葬式では、日本とは異なる以下の特徴があります。
- 遺体は自宅に帰らない
- 葬儀は1~2週間後
- 火葬と土葬がある
- 骨上げはなし
どのように違うのか、詳しく見ていきましょう。
遺体は自宅に帰らない
病院や安置所に保管された遺体は、葬儀の前に葬儀ディレクターが葬儀場へ直接運びます 。
葬儀場へ運ぶ前に、自宅の前を通ったり、故人が好きだった場所の周辺を通ることはありますが、遺体が自宅に帰る習慣はありません。
葬儀は1~2週間後
イギリスでは、亡くなった後すぐに葬儀を行うことはありません 。
遺体には、エンバーミングという、殺菌消毒と防腐処理が施されます。そのため葬儀が1〜2週間後でも、遺体は問題なく保存できるのです。
火葬と土葬がある
イギリスでは1963年に火葬禁止令が撤廃されるまで、土葬が一般的でした 。その後、火葬が行われるようになり、近年では土地の問題や衛生管理の理由から70%ほどが火葬となっています。
イギリス国内には、250ヶ所以上の火葬場があり、地域によっては、火葬が義務化されている場所も出てきました。
火葬の場合、その骨や遺灰について処分方法の法律はなく、故人の判断に委ねられています。
また土葬をする場合は、墓地や墓石を用意する必要があります。火葬と比べて費用が掛かるのも、土葬が減ってきた要因となっています。
骨上げはなし
イギリスで火葬をした場合、日本のように遺族がお箸でお骨を拾って骨壷に納める、 骨上げは行われません 。
イギリスで火葬する場合、遺灰になるまで完全に燃焼します。遺族は遺灰を引き取って、埋葬または散骨します。遺族が遺灰を引き取りに現れないこともあります。
土葬で埋葬した場所や、遺灰をまいた場所には、花や木が植えられます。
自然を愛するイギリス人は、思い出の花や木に話しかけながら、故人との思い出にふけるようです。
イギリスのお葬式のマナー
イギリスでお葬式に参列する際、気をつけたい マナー をご紹介します。
- 喪服はないが、黒が無難
- 香典の代わりにお花やカードをおくる
- 葬儀後の食事会に参加
それぞれ詳しく解説します。
喪服はないが、黒が無難
イギリスには、葬儀で着るための喪服がありません。
一般的には、男性は黒いスーツに黒ネクタイ、女性は黒のスーツやワンピースなど、黒い服を着る方がほとんどです。
ただし、 コートやカバンなどの色や柄にこだわりはありません 。
中には、亡くなった方の好きだった色や、家族の意向で「黒以外の服装で」と指定さ
れる場合もあります。
なにも指定がなければ、黒い服装で出席するのが無難でしょう。
香典の代わりにお花やカードをおくる
イギリスでは、香典の代わりにお花やカードをおくることが一般的です。
死亡広告に「親族以外、お花はお断り」と書かれていた場合は、カードを持参します 。とくに書かれていない場合は、故人の好きだったお花を持参するといいでしょう。
また故人や遺族の希望で、献花を辞退して、その代金を寄付するケースも増えてきました。
チャリティの場合は、会場で「チャリティに寄付を」というアナウンスが流れます。
葬儀後の食事会に参加
日本と同じくイギリスでも葬儀後に食事が振る舞われます。
食事会の場所は、パブや喪主の自宅などとくに決まった場所があるわけではありません 。
食べ物もサンドイッチやケーキなどの軽食で、気軽に思いで話をする時間となります。
遺族と故人の思い出話をするよい機会となりますので、ぜひ参加してください。
まとめ
イギリスのお葬式について、基本的な流れや特徴をまとめました。
イギリスのお葬式は、故人の復活を祝う場であると考えられているため、日本のお葬式と比べると明るい雰囲気だと感じるかもしれません。
ただし、マナーなどは宗派や家庭によっても異なるため、実際に参列する際は、親族や知り合いに聞いてみることをおすすめします。