オーストラリアのお葬式の流れ・服装について解説

オーストラリアのお葬式の流れ・服装について解説

オーストラリアは、世界中からさまざまな移民を多く受け入れる「多民族国家」として知られています。そのため、オーストラリア国内のお葬式は、さまざまな様式のもと、個々にあったスタイルで執り行われているのです。

いざ、オーストラリアでお葬式に参列することとなった場合、どのように立ち振る舞えばいいのでしょうか?本記事では、オーストラリアのお葬式における流れや服装のマナーについて詳しくご紹介します。

日本ではあまり見ない文化や、参列にあたって気をつけなければならないポイントについても解説して参りますので、ぜひお役立てください。

オーストラリアの葬儀の流れ

オーストラリアのお葬式は、どのような流れで行われるのでしょうか。ここでは、故人に不幸があったことを知らせる「訃報」が届いてから準備すべきことや、当日はどのように葬儀が執り行われるのかについて、解説します。日本ではあまり見られない、オーストラリアならではの文化や習慣にも注目です。

故人の宗教や出身国を知る

オーストラリアは多民族国家のため、故人の宗教や出身国の文化によって、葬儀のスタイルは大きく異なります。そのため、相手の宗教や出身国などの背景を、参列する前に確認しておくことが非常に重要なのです。

故人の訃報を受けたら、まずは友人・知人の方に「葬儀はどのような形式で執り行われるのか」を確認しましょう。それらの情報を把握した上で、順次、必要なものを準備していく流れとなります。ここでは、オーストラリアで最も多いキリスト教式のお葬式の流れで解説します。

国旗

案内された日時に斎場(教会)に行く

キリスト式の葬儀の場合、基本的に 知人は誰でも参列可能 です。事前に参列の連絡をする必要もありません。

会場に着いたらお悔やみを伝える

まずはご遺族にお悔やみを伝えます。日本語でいう「お悔やみ申し上げます」は I’m very sorry for your loss. と表現します。

キリスト式のご葬儀では、基本的に故人様との対面の時間はありません。式の進行自体は日本で行われる葬儀と大差はありませんが、お花がバスケットフラワーだったり、故人が好きだった音楽を流したり、風船を飛ばしたりと、しめやかな日本の葬儀の印象とは少々異なるでしょう。

オーストラリアのお葬式の特徴

ユーモア溢れる一面がある

オーストラリアの弔辞では、故人に関するおもしろいエピソードを話す人もいます。その際は、葬儀であるからと堅く構えずに、 素直に笑っても問題ありません

日本国内ではあまり見られない習慣なので、多くの日本人が、葬儀の場で笑顔を見せることに違和感を感じるのではないかと思います。

しかし、オーストラリアのお葬式は「悲しい」「寂しい」という感情で終始つつまれた雰囲気というより、参列者が一丸となって故人へのあたたかい思いを共有する場でもあるようです。よって、葬儀の間ずっと無理に暗い表情をつくるのではなく、然るべき場面では微笑んでみると良いでしょう。

今後も「故人と一緒に過ごした楽しい時間を忘れないで欲しい」という風潮は、なんとも心あたたまる、愛情で溢れた文化ですよね。

オーストラリアの葬儀の服装

日本の場合、通夜は黒やそれに準ずるダークトーンのスーツ、葬式では喪服で参列するのが一般的です。女性の場合も、通常は、黒のワンピースやスーツで参列しますよね。

私たち日本人には「お葬式=黒」という考え方が当たり前に定着していますが、海外では意外にもそうでない場合が存在するのです。ここでは、オーストラリアの葬儀における服装のマナーについて詳しく解説します。

オーストラリアに「喪服」は存在しない

オーストラリアでは、葬儀は「旅立ちの儀式」と考えられています。服装については、日本の葬儀ほど厳格な決まりはなく、喪服に当たるものはそもそも存在しません。

男性は、黒またはダークカラーのスーツに同じ色合いのネクタイ、女性も同様にダークカラーのスーツやワンピースなどがふさわしいとされています。

また、日本での「数珠」にあたるような、参列者が必ず持参すべきアイテムは特にありません。数珠を持っていなくても、慌てて用意する必要はないでしょう。

服装は案外自由である

基本的なよそおいに、その人なりのアレンジを加えて参列する場合も多く見受けられます。男性の場合、天候にもよりますが、ジャケットを着用せずに、落ち着いたトーンのブラウンやネイビー、パープルといったカラーのワイシャツのみで参列する人も珍しくありません。

女性の場合、レースや袖なしのワンピース、明るい色味のセットアップを着る人も多く存在するようです。柄が入った服でも問題はなく、アクセサリーもパールに限らず、好きな貴金属を身に着けることができます。

ストッキングに関しても、黒でなければならないという日本のような決まりはありません。もし迷ったら、上下どちらかを黒にしてみると、無難な格好に仕上げられます。

オーストラリアの人々が考える「お葬式への在り方」が影響している

中には、お葬式にサングラスを身につけて参列する人もいます。サングラスは男女ともに着用が可能です。また、女性の場合、帽子もマナー違反とはなりません。

日本国内では、とても考えられないと思う方が多いのではないでしょうか。ファッショナブルな服装が失礼に当たらないので驚きですが、このような自由な考え方はやはり、葬儀を「旅立ちの儀式」ととらえるオーストラリアの人々の考えが影響しているからと言えるでしょう。

日本とは違って、のびのびとした自由なスタイルが特徴的ですね。

服装のリクエストが届くことも

遺族から「故人の好きだった色の服を身に付けて参列してほしい」など、特別なリクエストが届く場合もあります。そのようなときは、忘れずにリクエスト通りの色の服を着ていきましょう。

どうしても服を持っていない場合は、小物で指定の色を取り入れてみるのも良いでしょう。全く持っていない場合は、準備が必要ですね。

清潔感のある格好を

カジュアルなよそおいであっても、十分な手入れが施された清潔な服装であることが大前提です。大切な儀式ですので、清潔感には気を配りましょう。

葬儀へ参列する直前に「シミやシワ、汚れが気になる部分があった」とならないよう、事前に何を着ていくか決めておけると安心できるでしょう。

自身が遺族側として参列する場合

もしご自身が遺族側の立場で参列する場合は、参列者よりもフォーマルな服装が望まれます。遺族と葬儀社の人々は、黒一色で統一した服装であることがふさわしいと言えるので、注意が必要です。

何はともあれ、不安なことや分からないことがあったら、葬儀社へ確認することが大切です。

パスポート

オーストラリアの葬儀の注意点

オーストラリアで開催される葬儀へ参列する際には、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。もちろん、故人が所属する宗教や、出身国の文化について把握し、注意を払うことは大前提です。

ここでは、オーストラリアで行われる葬儀全体に共通する、日本とは大きく異なる点についてご紹介します。

ポイント

オーストラリアに「香典」の文化はない

一般的なオーストラリアの葬儀には、日本の 「香典」に当たる習慣がありません 。実は、オーストラリアに限らず海外全域で見ても、 香典を渡す習慣がある国はあまり存在しない のです。

国や宗教の背景によって、香典の代わりに贈るものは異なります。しかし、多種多様な文化が混在するオーストラリアでは、香典の代わりに必ず渡さなければならないと言われているものは、特にありません。

しかし、大切な故人が最期を迎える重要なセレモニーです。故人とそのご遺族へ向けて、少しでもお悔やみの気持ちを表したいものですよね。ここでは、香典の代わりに何を送れば良いのかについて、詳しくご紹介します。

メッセージカード(シンパシーカード)やお花を贈る

故人や遺族との間柄が近しい場合は、お金ではなく「メッセージカード」や「お花」を贈ると良いでしょう。メッセージカードには、故人に対する感謝の気持ちはもちろん、残されたご遺族を気遣う言葉もかけられるよう、心がけてください。

もし葬儀に出席できないのであれば、なおさら、メッセージカードやお花を送ることで、それらにお悔やみの気持ちを伝えることができます。

宗派によっては、お花を送る文化があまりない場合もあるので、注意が必要です。こちらに関しては、次の項目で詳しく解説いたします。

宗教によっては、お花を贈ることが重要視されない

カトリックやユダヤ教の葬儀においては、 花を飾ることが重要視されません 。よって、お花を贈る習慣がないことが想定されます。故人の所属がカトリックやユダヤ教に該当する場合は、「お花を送ってもよいか」と事前に遺族へ問い合わせましょう。

もし、確認できる時間の余裕がない場合は、 メッセージカードのみ を送ります。「お花の手配を進めていたが、実は必要なかった...」となることは避けたいですよね。スムーズに準備を進めるためにも、事前に確認しておけると安心です。

故人の意向で寄付を希望する場合も

お花の代わりに、故人が生前関わっていた慈善団体やチャリティーなどへの寄付を希望するパターンも、多く存在すると言われています。

もし「故人の希望する使途で寄付を行なっていただきたい」という旨を、遺族から伝えられたら、そのように従いましょう。実は、このような場面でも、本記事の1章で解説した「事前のリサーチ」は大いに役立つのです。

故人の背景について詳しく知っておくことで、どのような選択をするのがベストなのか、把握することができます。故人に合った選び方ができるといいですね。

まとめ

今回は、オーストラリアのお葬式における、葬儀の流れや服装のマナーについて解説して参りました。オーストラリアは、多種多様な人々が入り混じる国ということで、宗教や宗派など異なる部分が多々あります。

自身が参列するお葬式はどのような形式で執り行われるのか、事前にリサーチすることが重要と言えるでしょう。国は違えど、お葬式は重要なセレモニーであることに変わりはありません。

大切な人の最期ですので、きちんと礼儀作法をおさえた上で、しっかり向き合いたいものですよね。今回の記事が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです

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監修・奥山晶子
監修・奥山晶子
株式会社むじょう 編集者
冠婚葬祭互助会に従事し、その後おもだか大学名義で「フリースタイルなお別れざっし 葬」(不定期)を刊行。現在は葬儀や墓など終活関連の記事を手がけるライターとして活動中。2012年より2年間、NPO法人葬送の自由をすすめる会の理事をつとめる。主な著者に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』がある。