家族葬の費用は実際いくら?損をしない葬儀の選び方について解説
近年、葬儀の種類が増えてきて、それぞれのニーズに合わせて選ぶことができるようになりました。
しかし、自由な形の葬儀では一般葬とは違った費用がかかるなど、葬儀のスタイルを決めようというときに費用に関する不明点があることでしょう。
今回は家族葬の費用、また家族葬と一般葬の違いについてご紹介します。
家族葬と一般葬の違い
家族葬とは
親しい方を中心に故人をお見送りする葬式 の総称です。
家族のみでなく、親しい友人も含めて少人数で行う葬式のことを指します。
どこまで参列者を呼ぶかは家族葬には明確な定義がありません。
基本的に必要なことや式の流れは一般的な葬儀とほぼ同じですが、少人数のため、一人ひとりの想いが反映しやすいという特長があります。
一般葬とは
身内だけでなく、さまざまな立場の方を広く呼んで大規模に行う葬儀の総称です。
ですので、社会的な人間関係を重視したい方や、付き合いが多い方などに向いていると言えるでしょう。
一般葬の場合は、小規模スタイルの葬儀のように参列者をごく親しい身内だけに限定せず、会社関係の方やご近所の方、そして学校やサークルの関係者など、故人にご縁の合った方たちを幅広く呼ぶという特徴があります。参列者の人数についても、100名を超えるような大規模な式になることがあるため、それに合った大き目の会場を用意する必要があるでしょう。
また、費用に関しても、規模が小さい場合より高くなることがあるため、それなりの予算を用意しておくことも必要になります。
家族葬は増えている?
「第5回お葬式に関する全国調査」(株式会社鎌倉新書 2022)によると、行った葬儀のうち、コロナ前の2020年は一般葬が48.9%で過半数を占め、家族葬が40.9%であったのに対し、コロナ後の2022年は、一般葬が25.9%、家族葬が55.7%と 家族葬が増えている 傾向にあります。
家族葬は一般葬より安く済むとは限らない?
家族葬は一般葬に比べ費用が安いというイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。
葬儀規模は一般葬に比較して規模が小さくなることがほとんどですが、それに応じて費用も安くなるかというと、必ずしもそうとは言えません。
参列者の人数に比例する内訳となる費用もあれば、参列者の人数に関わらず変わらない費用もあります。
さらに、参列者が少ないということは、香典(=葬儀費用に充てられる収入)も少ないということになります。
そして、香典をもらったとしても、参列者にはお返しをしなければなりません。その金額はもらった金額の半分となる「半返し」をするのがマナーですので、実際には香典としてもらった金額の半分しか残りません。
従って、参列者からの香典では葬儀費を賄うことは難しいでしょう。
これらを差し引くと、結果的に一般葬を営む場合の費用と大差ないといったようなケースも出てきます。
家族葬だから経済的負担が軽くなるとは一概には言えない のが実際のところです。
家族葬の費用相場
葬儀の口コミを運営している株式会社ディライトによると、東京での家族葬の相場は、お布施を除いて 56.6万円 です。(2022/12/8更新)
株式会社鎌倉新書の「第5回お葬式に関する全国調査」(2022)によると、葬儀全体において、2020年の調査ではお布施を除いた葬儀費用の平均が184万円だったことに対し、2022年では過去最安の110.7万円まで下落しています。
これは、感染症の影響で参列者が減り、葬儀が縮小、簡素化していることが主な理由になっています。
出典:
新宿区はじめてのお葬式/葬儀の口コミ
株式会社鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査」(2022)
家族葬にかかる費用の内訳
家族葬にかかる費用の内訳は以下の3つで構成されています。
基本的な費用
斎場利用料や祭壇、棺、ご遺影など、お葬式(通夜・告別式)を行うのにあたり、必要なものの費用。主に葬儀社に手配をお願いする部分です。
一般葬に比べ、家族葬は参列者が少ないので、小規模な斎場を利用することができます。
飲食費・返礼品にかかる費用
飲食や返礼品など参列者のおもてなしに必要な費用です。
菩提寺などへのお布施
僧侶や神職、牧師、神父など、お葬式をお願いした宗教者への謝礼としてご用意いただく費用です。仏式では「お布施」、神道では「御祭祀料」、キリスト教では「御礼」や「献金」にあたります。
「第5回お葬式に関する全国調査」(株式会社鎌倉新書 2022)によると、お布施の平均費用は22.4万円となります。
地域性や菩提寺との関係性が大きく反映されるものなので、もしお布施の金額がわからない場合は、菩提寺や葬儀社の担当者に相談するようにしましょう。
家族葬の費用を抑えるポイント
参列者数を制限する
参列者数を制限すれば、小規模な斎場を利用することができるので、式場利用料が安くなります。
加えて、参列者数に比例する通夜振る舞いや精進落としなどの飲食費や返礼品にかかる費用が抑えられます。通夜振る舞いは一人当たり2,000円〜3,000円程度、精進落としは、一人当たり5,000円以上が相場になっています。
コロナ禍において、 参列者数を制限すること自体が感染防止対策になります。
家族葬の式次第を工夫する
お金をかけることが親孝行だ、という考えももちろんあります。自分の親や配偶者など大切な人をどんな葬儀で見送りたいかと伺うと「立派な祭壇を飾って...」「いいお料理を振る舞って...」といったお声を多く耳にします。
一方で、ご自身の葬儀をどうしたいかと伺うと「子供に負担がかからないように質素に...」「家族が見送ってくれたら十分...」といったお声がほとんどです。
まずは 「自分なら」を考えてみましょう。
お金をかけて用意したお花も、お金はかかっていないけど心を込めて書いてもらったお手紙も、等しく嬉しいものではないでしょうか?お花入れの時、お花の量は少なくても思いの込もったお手紙が一つ入るだけで、故人様はきっと喜ばれるでしょう。
このように、お花入れの演出に手をかけるのも一つです。
また、思い出ムービーなども工夫できる演出です。思い出ムービー(スライドショー)もよくセットプラン以外のオプションとして勧められます。業者がつくるものなので当然美しいムービーができます。
業者がつくるクオリティには届かないかもしれませんが、今はスマホ一つで簡単に動画が作れる時代です。昔の写真を掘り返してきて、思い出の写真をご自身で整理し、手作りするのも一つの工夫です。ご葬儀の準備で忙しければ、子供や孫に頼んでみても良いでしょう。
これらはあくまで一例ですが 「お金をかける」以外に「手をかける」という選択肢がある ことを頭の片隅にとどめておいてください。
葬儀社の提示するオプションを選択しない
葬儀社が提供するセットプラン以外のオプションをなるべく選択しないことで費用を抑えることができます。ただし、葬儀社によってセットプランが異なるので確認しましょう。
供花や供物、祭壇を最小限にしたり、湯灌やご遺体のメイクアップを行わないようにしたりする ことが考えられます。式のあり方と予算を考えながら選択するようにしましょう。
*湯灌・・・納棺の前にぬるま湯で洗い清めること
他にも、 通夜振る舞いや精進落としを省いたり、通夜振る舞いや精進落としで出るような料理を折詰やお弁当にしてお持ち帰りいただくようにする例 があります。これにより、飲食費を抑えることができます。
できれば公営の火葬場を選ぶ
次に、火葬場選びにおいて費用を抑えられる例があります。
火葬場には公営と民営があります。故人が特定の地域の住民であれば、公営の火葬場を利用できます。費用は0〜6万円が相場です。
民営の火葬場は5〜10万円が相場と言われています。
また、火葬場まで参列者を乗せるマイクロバス代がオプションとしてかかる場合があるので、マイクロバス代を含めた火葬費用で比較しましょう。斎場に火葬場が併設されている場合、マイクロバス代がかからないので安くなることがあります。
相見積もりで葬儀社を比較する
葬儀費用を抑え、予算の範囲で執り行うためには、事前に複数の葬儀社に見積もりを依頼して相見積もりで比較しましょう。
その際、同じようなセットプランでも、商品・サービス内容が異なる場合があるので、セットプランに含まれている内容を確認するようにしましょう。葬儀に必要な商品・サービスがセットプランに含まれていない場合、追加料金が発生します。追加費用を含めた総費用を葬儀前に把握するようにしましょう。
無宗教葬を検討する
家族葬を無宗教で執り行うこともできます。
無宗教葬とは、特定の宗教・宗派の儀礼や伝統的な作法で葬儀を執り行わず、故人本人、家族の意思や希望に合わせて葬儀の内容を設計することができます。
この場合、 僧侶を呼ぶ必要がないのでお布施は必要ありません。
無宗教で執り行う場合、トラブル防止のために親族にあらかじめお知らせするようにしましょう。
家族葬を終えた後に発生する費用
ご供養のために用意できるお金を全て家族葬で使い切ってはいけません。なぜなら、家族葬を終えた後に発生する費用もあるからです。ここでは、家族葬を終えた後にかかる費用についてお伝えします。人によって必要な手続きや費用が変わってきますので、どの項目がご自身に関わってきそうかを考えながら読み進めてください。
法事や法要の費用
仏教では、初盆、納骨式、初七日、四十九日、一周忌など様々な法事や法要が行われるのが一般的です。その度に費用が発生することが想定されます。
仏壇の費用
自宅などに仏壇を準備する場合、葬儀とは別に費用が発生します。例えば、唐木仏壇の場合、60万円〜110万円が相場になっています。仏壇は、四十九日までに準備するのが一般的だと言われています。
相続手続きのための費用
故人が亡くなってから10ヶ月以内に、遺言書の確認から相続税の申告まで相続手続きを行わなければなりません。その際、 司法書士、行政書士、銀行、税理士、弁護士 に手続きを円滑に進めていただく必要がありそこで費用が発生します。
具体的な費用相場は、依頼先や財産の種類・大きさ、相続状況によって多岐にわたるので、早めに相談、複数の依頼先を比較検討するのが良いでしょう。
遺品整理にかかる費用
葬儀後、遺族の方が遺品が整理できない場合に、遺品整理サービスを利用することが考えられます。具体的な費用相場は、家の広さによって異なるので業者を調べて比較検討するのが良いでしょう。
空き家処分にかかる費用
故人が住んでいた家が空き家になる場合、 不動産業者への売却、解体(土地のみの売却)、相続者が維持管理、放置 のいずれかを行わなければなりません。
不動産業者への売却の場合、不動産業者への仲介手数料、家財の処分費用がかかります。
解体する場合は、解体費用、家財の処分費用がかかる。相続者が維持管理もしくは放置する場合、空き家を所有している限り固定資産税を納税しなければなりません。
まとめ
今回は家族葬の費用、家族葬と一般葬の違いについてご紹介しました。
いろいろなスタイルの葬儀が出てきたからこそ、ニーズに合った葬儀を費用を踏まえて選べると良いと思います。
今回の記事が葬儀の形式を選ぶ際の参考になれば幸いです。