葬儀式場にペットの同伴は可能?同伴するときのマナーも解説
遺族が「故人が愛していたペットを、葬儀に同伴させたい」と願うのは、珍しいことではありません。しかし、ペットの同伴が可能かどうかは、式場のルールによって違ってきます。ペットの同伴を許可してもらいやすい式場の特徴や、ペットを同伴したときのマナーについて解説します。
葬儀の式場にペットは同伴できる?
一昔前までなら、「葬儀にペットを同伴させたい」などと言ったとたん、葬儀社を困らせ、親族から強く非難された可能性が高いでしょう。長らく、ペットを葬儀に同伴するのは非常識とされてきました。儀式の最中に鳴き声が聞こえたり、式場を汚したりしたら、参列者や宗教者、葬儀社に迷惑をかけてしまうといった考えがその根底にありました。
しかし、1990年代後半から始まったペットブームは、「ペットも家族」という認識を日本中に植え付けていきます。大切な家族であれば、遺族の一員として葬儀に同伴するのも当然のこと。そのような考えを持つ人も、増えてきているのではないでしょうか。 最近では、だいぶ柔軟に対応する葬儀社が増えてきました。
葬儀の式場にペットは同伴できる?
葬儀の式場にペットを同伴したい場合、誰に相談すると良いかは、立場によって変わってきます。
喪主であれば葬儀社に相談する
喪主が家族の一員としてペットを同伴したいときは、葬儀社の担当社員にその旨を伝え、葬儀式場のルールを確認してもらいます。ペット同伴についてのルールが確立している式場であれば、すぐに答えをもらえるでしょう。
参列者は、特別な事情がなければ控えたい
参列者の場合、盲導犬の同伴以外の相談は、なるべく控えるのがマナーです。ただ、故人がペットの散歩仲間であり、仲の良かったペットを葬儀に連れて行きたいなど、特別な事情があるときは喪主にかけあってみましょう。ただし、葬儀社側のルールも関わってくるため、必ず叶えられるとは限りません。
ペットを同伴しやすい式場や葬儀
ペットの同伴を許可してもらいやすい式場や葬儀の形式は、以下のようなものです。
家族葬専用式場
親族だけが参列する家族葬の専用式場であれば、ペット可とするところもあります。一般参列者が訪れず、喪主の「ペットを葬儀に」という強い思いを分かってくれる人だけが集まる場だからです。
一棟貸しを行っている式場
1つの建物の中に式場を一つしか設けておらず、一棟貸しをしている葬儀式場であれば、他の家の葬儀に迷惑をかける可能性がないため、ペット可とするところもあります。
無宗教葬を行う場合
宗教儀式の最中にペットの声が響くと、式の進行に影響を及ぼす恐れがあります。その点、無宗教葬であれば、宗教者の儀式進行を乱す恐れがありません。式場側の許可があれば、宗教者の許可を必要とせずにペットを同伴できます。
自宅葬をする場合
自宅で葬儀を行うなら、ペットの同伴はもちろん可能です。誰にも気兼ねせず、ペットを大事な家族の見送りに参加させられます。葬儀の日は人の出入りが多くなるため、ペットの脱走には十分気をつけましょう。
ペットを同伴しにくい式場や葬儀
なかには、ペットの同伴を許可しにくい式場や葬儀もあります。最初からペットの同伴を希望している場合は、以下のような式場や葬儀を避けた方がよいでしょう。
建てられてからだいぶ年数が経っている式場
ペットブームが到来する前からある葬儀式場は、ペットを可としない古いルールが残っている可能性があります。ペット同伴のニーズが増えても「前例がないから」「以前、お断りしたお客様に示しがつかないから」と、積極的にはルールを変えないでしょう。
一度に複数の葬儀が行われる大きい式場
一度に複数の葬儀が行われる大きい式場では、ペットの声が響いて、隣の式場にまで聞こえてしまう恐れがあります。参列者にはさまざまな考えの人がおり、「式場にペットを入れるなんて非常識」と捉える人も、いないとは限りません。式場へのクレームなど、トラブルにつながる恐れがあります。
寺院
ペットの同伴を禁止している寺院は少なくありません。「ペットの声は大事な儀式の進行を乱してしまう」「本堂が汚れたり、貴重な物品を壊されたりしたら困る」といった理由からです。
ただ、近年では「ペットも家族」という意識への賛同から、ペット霊園やペット火葬を手がける寺院も多くなってきました。菩提寺の本堂で葬儀をとの希望があるなら、事前に一度相談してみるのがいいでしょう。
ペット可とする式場の条件例
ペット可としている式場であっても、その条件はさまざまです。多くは「式場を汚さないこと」「他の参列者等に迷惑をかけないこと」に重点を置いて、条件が敷かれています。主な条件例は、以下の3つです。
室内犬のみOK
トイレのしつけができている室内犬に限り同伴可能としているケースです。もともと室内で飼っている犬であれば式場を汚すことがないという考えからです。
室内犬の他は、ケージに収まっていればOK
トイレのしつけができている室内犬の他は、ケージから出さなければ同伴可能としているケースです。ネコはいたるところで爪とぎをする恐れがありますし、小動物は所構わず糞尿をしてしまう心配がある上、脱走すると行方が分かりづらくなります。ケージに入っている限りは、粗相や脱走の可能性がなくなります。
ケージに収まっていれば、宿泊もOK
通夜や葬儀への同伴だけでなく、控室への宿泊も許可してくれるケースです。深夜は鳴き声が外へ響く恐れがあるため、一棟貸しの式場でなければ許可は難しいでしょう。
ペット可とする式場での同伴マナー
ペットを同伴することが決まったら、以下の4つに気をつけましょう。
汚れや臭いに十分気をつける
ペットがいる空間に慣れていない参列者もいます。犬の場合は式場に連れて行く前にシャンプーを済ませる、足の裏を丹念に拭く等して、汚れや臭いに十分気をつけましょう。ネコは爪を切り、トイレの砂をこまめにとりかえて臭い対策をします。また、ケージの周りには新聞紙を敷くなど、思いがけない粗相に備えましょう。
儀式が始まる前にペット同伴の旨をアナウンスしてもらう
気の置けない関係の人ばかりが集まる葬儀であっても、儀式前には、司会者からペット同伴の旨をアナウンスしてもらいましょう。その際、ペットと故人との関係や、ペットを大事な家族の一員と考えているなど、遺族の気持ちを伝えてもらいます。
鳴き声が儀式に影響するときは速やかに退場する
儀式中は、日常とは違う雰囲気が漂います。普段はおとなしいペットでも、不安を感じて鳴き声を出してしまうかもしれません。あまりに鳴き声が大きく、儀式に影響するときは、ペットと一時退場しましょう。ペットの気持ちを落ち着かせてから、また参列します。
かえってペットのストレスにならないか考える
葬儀の場は、いつもとは違う部屋、厳粛な雰囲気、線香の匂いなど、繊細なペットにとって不安になることばかりです。敏感な性格のペットであればなおさら、同伴がペットにとって負担にならないか考えてみましょう。ペットのことを考えて、あえて同伴しないというのも一つの方法です。
【まとめ】
葬儀にペットを同伴するのは可能ですが、式場規則や葬儀の種類、またペットの種類によっては、許可が下りないこともあります。同伴がペットのストレスにならないかどうかも、考えなければなりません。その点、自宅葬であればさまざまなことを気にせず、堂々とペットを同伴できるといえるでしょう。葬儀にペットを同伴したい人は、葬儀場の選択肢に自宅を加えてみるのがおすすめです。