枕飯の疑問を解決! 供える意味や期間、使用する茶碗などについて
葬儀の準備に入ると、故人に供える「枕飯」という言葉を耳にします。あまり聞きなじみのない言葉ですが、一体どのようなものなのでしょうか。
枕飯は、故人が使っていた茶碗にご飯を盛り、箸を立てたもので、死者のこの世での最後の食事とされます。枕飾りとともに遺体の枕元に供えますが、ご飯の他にも枕団子などがあります。
地域や宗派によって慣習が異なるので、周囲の人に確認し、ふさわしい供え方を知ることが大切です。
この記事では、枕飯の意味や由来、作り方、処分方法について、簡単にご紹介します。
枕飯とは遺体の枕元に供えるご飯
枕飯は 遺体の枕元に供えるご飯のことで、ご飯の中心にお箸を垂直に立てて飾る、枕飾りのひとつ です。
枕飾りは安置から葬儀の前まで設置される簡易式の祭壇で、枕飯は故人の物欲や食欲を浄化するためにお供えします。日本各地で広く行われてきた習慣ですが、宗派によって内容にかなり差があります。ここでは、仏式の方法を取り上げます。
一般に仏式では、白布をかけた低い机か白木の台に、三具足と呼ばれる花立・香炉・燭台を置きます。他に、団子やお水、樒などが飾られる場合もあります。
近年では、枕飾り一式を葬儀社が用意することがほとんどです。お通夜前に訪れた弔問客は、すみやかに焼香や礼拝といった弔いの行動をとり、故人の冥福を祈ることが可能です。
浄土真宗の場合は、亡くなるとすぐ仏になると考えられているため、旅立ちの準備となる枕飯は用意せず、台に本尊を安置することがあります。
枕飯の由来
枕飯のルーツは、一膳飯(いちぜんめし)にあるとされています。
一膳飯は、 かつて独立や婚姻などで家を出る際に、一膳限りという意味で出されていた別れの膳のこと でした。つまり、出された人がその場でいただく、たった一杯のご飯が最後の食事(2膳目は無い)とされたことから、死者の枕元に置く最期の食事として、葬儀の作法に取り入れられるようになりました。
現在、食事のマナーにおいて、ご飯にお箸を立てることは枕飯を連想させるため、「縁起が悪い」と嫌悪されます。
枕飯の作り方と盛り方
枕飯にはどのような作法があるのでしょうか。枕飯の作り方と盛り方について、簡単に説明します。
枕飯のお米の炊き方
まず、 家族が食べる分とは別に、一合の白米を炊きます 。
一膳飯は死者のために用意するのであって、生者の食べ物とは分ける、という考えによっています。
かつては身内が亡くなった際、生きている者は故人に対して、食い別れの儀式をしました。食い別れの儀式とは、ご飯を1膳だけ食べる、一本箸で食べる、お椀の蓋で酒を飲む、などの普段は決してしない食べ方を故人の周りで行うものでした。このようにして生前、同じ釜の飯を食べた故人に対して、もはや共食者ではないことを示し、別れの儀としたといいます。
枕飯の盛り方
炊きあがった枕飯用のご飯は、 一粒も残さないようにして茶碗に盛りつけます 。
2つの茶碗にご飯をよそい、片方の茶碗を、もう片方の茶碗に押し付けた後はずすと、綺麗な山の形になった枕飯ができます。山の高さは、高い方がよいとされています。
地域や宗派によっては玄米でないといけない、などの作法もあるため、周囲に確認しましょう。
枕飯の箸の立て方
枕飯の箸の立て方は、日本各地で様々な方法が取られています。
1膳の箸を立てるにしても、前から見たときに2本並んでいるようにするか、1本に見えるようにするかによって違いがあります。
1本だけ立てることもありますし、他に、1本を立て、もう1本は横向きにご飯の上に置いて十字形にする、などがあります。
どの立て方でも、ご飯の中央に箸を刺すことでより高く見せられます 。
枕飯の処分の仕方
故人のために供えた枕飯は、いつ、どのようにして片づければよいのでしょうか? ご飯なので食べた方がいい? それとも、ゴミと一緒に処分する?
枕飯に使用したお茶碗の処分方法についても確認しましょう。
交換した枕飯の処分方法
毎日、交換した枕飯の処分については、
- 安置から火葬当日までに供えたすべてを半紙に包み、棺に納める
- 前日まで供えた枕飯は家族で食べ、火葬当日に供えた枕飯は半紙に包み、棺に納める
などの方法があります。
ただし、夏場の暑い季節は衛生の観点から無理に食べる必要もありませんし、場所によって処分の方法が異なるので、 周囲に確認しましょう 。
枕飯に使用した茶碗の処分方法
多くの地域では、 枕飯に使用した茶碗を出棺時に割る風習があります 。
割った茶碗の処分方法は、自治体にしたがってゴミとして出すか、納骨の際に、墓地の埋めてよい箇所に埋納します。墓地に茶碗を埋めてよい区画があるかどうかは、墓地の管理者に事前に確認しましょう。
枕飯についてよくある質問
ここまで、故人の枕元にお供えする枕飯について、炊き方や盛り方を確認してきました。
最後に、細かいことかもしれませんが、お供えする期間、交換の頻度、お茶碗のことなど、枕飯についてのよくある質問と回答を見ていきましょう。
枕飯はいつまで供えるの?
一般的に、 枕飯を供える期間は、故人を安置した時から葬儀の前までとされています 。火葬の前日であったり、納棺までとする場合もあります。
枕飯は毎日交換するの?
枕飯のお供は、毎日炊きたてのご飯に変えるのがベスト です。
ただし、枕飯を準備する人の心理的、時間的余裕を考慮して、無理強いはしないようにしましょう。そのため、基本的には、配慮する余裕のある人がご飯を交換することになるでしょう。
現実的に考えると、遺族は葬儀のことを考えたり、急な弔問の対応をしたりと、とても忙しいため、毎日交換するのは難しい面もあります。
また、葬儀社が用意する場合もあれば、自分で用意する場合もあります。枕飯の交換について気になる時は、葬儀社に相談しましょう。
枕飯に使う茶碗は?
枕飯に使用する茶碗は、 故人が生前使っていたものが、ふさわしいとされています 。
しかし、状況によっては、故人が愛用していた茶碗が見つからないケースもあります。このような場合は、葬儀社や周りの人に相談しましょう。
出棺時の茶碗割りには、さまざまな意味があると言われています。
1つめは、故人が生前使っていた茶碗を割ることで、故人に別れを悟ってもらうためです。これには故人が食事をとれない状態にして、現世への未練を断たせるという意味も含まれています。
2つめは、故人の死出の旅路に愛用の品を持たせるためです。送り出す側の思いやりが込められていると言われます。
3つめは、遺族が故人の遺品を割る儀式を行うことで、悲しみに一段落をつけ、気持ちを整理するためです。
なお、浄土真宗では茶碗割りをする習慣はないようです。
まとめ
故人の死後、すぐに供える枕飯には、さまざまな意味が込められていることがわかりました。
はるか昔、死者に食事を供える行為には呪術的な意味があり、供えられたご飯を見た故人に対し「生き返ってほしい」という願いを込めた、という説があります。
食べることは生きるために不可欠な行為で、生の象徴です。故人の死を悼む気持ちが、故人に食べ物を与える行動となり、結果的に、現在の死者に食べ物を供える習慣につながっていると言えるでしょう。