自宅葬の空間づくりアイディア14
故人や遺族の自宅で葬儀を行う自宅葬では、遺族自身が自由に飾り付けを行ったり、演出を考えたりすることが可能です。しかし、介護や看取りで心身ともに疲れている中、手作り葬儀は難しいと感じる人も多いでしょう。この記事では、なるべく負担を最小限にしながら故人らしい空間で送り出すための演出アイディアをご紹介します。
自宅葬は空間づくりを考えるのがやや難しい
自宅葬は、葬儀専用式場と違い、式場としての設備が十分に整っているわけではありません。常には家族が暮らすための空間なのですから、当たり前のことです。葬儀があるからといって、暮らしの空間を葬儀式場と同じような空間にするためには、かなりの労力が必要です。
そこで今回は、少しの工夫で故人らしい葬儀を演出するためのアイディアをご紹介します。
遺族が負担を最小限に取り組める空間デザイン6
故人の写真を額装して壁に飾る
自宅葬の演出で良くある悩みが、「部屋が狭くて本格的な飾り付けはできない」というものです。そんなときは、壁への飾りつけに重点を置くのはいかがでしょうか。 故人の写真をプリントアウトし、額縁に入れて、玄関や廊下、式場となる部屋に飾る のです。
葬儀後もそのまま飾っておけば、いつも故人に見守られているように感じる でしょう。
額縁は100円ショップやホームセンターでも手に入ります。
故人の画像をフォルダにまとめ、タブレットでスライドショーに
PCやタブレットに1つフォルダを作り、故人の写真画像を入れます。紙焼きの写真はスマートフォンなどで撮影して保存しましょう。
フォルダ内の画像に、時系列順にナンバーを振ってスライドショーにすれば、故人の人生を幼少期からの写真で紹介することができます。
式中に紹介するだけでなく、PCやタブレットを棺のそばに置いてスライドショーを流したままにしておけば、式の前後に参列者がじっくり見ることができます。写真を見ながら、思い出話ができるでしょう。
趣味の道具を玄関や棺の前に飾る
釣りが好きだったなら釣り竿を、囲碁が趣味なら囲碁盤を、絵画が趣味なら作品をと、故人の趣味の道具や作品が、そのまま式場の演出になります。飾り方に迷ったら、葬儀社に相談してみましょう。
故人が好きだった曲をBGMに流す
式の前後に、故人が好きだった曲をBGMとして流します。無宗教葬であれば、式中も流しておくと良いでしょう。
故人が好きだった香りをアロマや線香で焚く
ラベンダーやローズ、レモングラスなど、故人が好きだった香りがあれば、アロマを焚きましょう。自然に囲まれるのが好きだった人のために、ひのきの香りのアロマやお線香もおすすめです。ふだんからアロマを焚かない家であればなおさら、香りを部屋に漂わせることで、ガラッと特別な空間に返信します。
野の花をお別れ花にする
故人が手入れをしていた庭や植木があれば、そこからお花を摘んで、棺に入れてあげましょう。フレッシュな野の花をお別れ花にできるのは、自宅葬だからこそです。
葬儀社に相談しながら行う本格演出アイディア3
部屋全体を幕で覆って本格的な式場に
部屋の中にある家具が気になる人は、隠してしまうのも一手です。
葬儀社に依頼し、垂れ幕を貼ってもらいましょう。葬儀のための幕といえば、白黒ストライプの「鯨幕」が有名ですが、シンプルな白い幕を用意してくれる葬儀社もあります。
例えば、ブルーの幕で部屋全体を覆えば、海のような演出も可能です。
故人が好きだった色の花で部屋を彩る
自宅葬でも華やかな葬儀をと望む場合は、生花の力を頼りましょう。故人が好きだった花、または色味を葬儀社に伝え、棺の周りを生花で飾りつけてもらいます。費用は10万円から、花が多ければ30万円ほどアップするでしょう。しかしそのぶん、満足の行く演出となります。
壁を大きなスクリーンにして故人の生き様を映像で紹介する
式場となる部屋に白く大きな壁がある場合には、そこへプロジェクターで故人の写真を投影し、生き様を映像で紹介するのはいかがでしょうか。
プロジェクターの貸出については、まずは葬儀社に確認してみましょう。プロジェクターのレンタルを依頼するという手段もありますが、葬儀当日までに手配できるか、必ず確認が必要です。
葬儀のしきたりをアップデートする空間デザイン2
玄関にリースを飾る
日本には、不幸があると「忌中」と書かれた札をその家の玄関につるす風習があります。ただ、現代では、不幸があったことをあからさまにするのは避けたいと「忌中札はかけないでください」と希望する遺族も少なくありません。
そこで、自宅葬を行う日は玄関先にリースを飾り、今日が特別な儀式の日であることをさりげなく表すのはいかがでしょうか。 参列者も、リースを見れば「ここからは特別な空間」と感じる ことでしょう。
玄関先からアーチで送り出す
葬儀の多くが自宅葬だった頃、全国的にあった風習が「仮門」です。仮門とは、竹や庭の草木を3本切ってコの字型に結わえつけた、簡易的な門のこと。葬儀が終わると棺は家を出た後、その仮門をくぐって火葬場へ行きます。仮門は、役目を終えれば燃やしてしまいます。
門が燃えて消えてしまえば、故人はもう家に帰ることができません。仮門は、故人が迷わずあの世へ行くための、そして家に穢れを残さないためのしきたりの1つでした。
この「仮門」を模して、草木や花でアーチを作り、棺を送り出してはいかがでしょうか。自宅葬をするにあたって、「自宅を式場にしてしまうと、葬儀の後、日常に戻るのが難しいのでは」と感じる人には、とくにおすすめです。
参列者を温かくもてなす空間デザイン3
葬儀前後のおもてなしに故人が好きだったお菓子やコーヒーを
自宅葬では、訪れてくれた参列者に、お茶でおもてなしをすることがあります。お茶菓子に故人が好きだったお菓子を選んだり、故人好みの飲み物を振る舞ったりすれば、印象的な演出の一部になるでしょう。思い出話もはずみます。
精進落としは故人が気に入っていたお店で
葬儀後に親族などで会食することを、精進落としといいます。自宅葬の場合は仕出し弁当を用意するのが一般的ですが、故人が気に入っていたお店へ行ったり、テイクアウトしたり、出前を頼んだりすれば、より故人らしい葬儀になります。お店には、あらかじめ予約を入れておきましょう。
愛用品を展示し、形見に持ち帰る品を選んでもらう
棺の周りに故人の愛用品を展示します。展示の品は、アクセサリーや帽子、ネクタイ、財布、小ぶりのバッグなど、身につけていたものが良いでしょう。そして最後に、どんな品物かを説明しながら、形見として持ち帰っても良いことを参列者に告げましょう。
形見分けは、相続と違い、子や孫、兄弟などの法定相続人以外にもおこなってよいものです。遺族以下、法定相続人らが納得してお渡しするものであれば、故人の友人や親族などにも形見分けができます。葬儀は法定相続人が集まる機会ですから、形見分けがしやすいといえるでしょう。
ただし、値打ちが定かでない宝飾類などは、相続人以外に渡さないようにしましょう。あとでかなり値の張る物だったことが分かると、相続人の誰かが不平を唱えたり、相続のやり直しが生じたりするなど、トラブルのもとになります。
まとめ
このたびは、自宅葬の演出アイディアをご紹介しました。葬儀の前にふと思いついて故人が好きだった曲を流したり、故人の部屋から愛用品を持ち出したりできるのは、自宅で葬儀を行うからこそです。小さな工夫で、温かな葬儀を叶えましょう。