【お葬式のむすびす】喪に服さない!?家族がつくるお葬式のサポート

【お葬式のむすびす】喪に服さない!?家族がつくるお葬式のサポート

【お葬式のむすびす】喪に服さない!?家族がつくるお葬式のサポート
【お葬式のむすびす】喪に服さない!?家族がつくるお葬式のサポート

「お葬式のむすびす」を運営するむすびす株式会社の創業者、中川貴之さんのお話を伺いました。むすびす株式会社は、2002年10月に「株式会社アーバンフューネスコーポレーション」として設立されました。「100人いれば100通りのお葬式」を掲げ、ご家族主体で創り上げるお葬式のサポートを東京を中心に行っています。インターネットの聡明期から、葬儀のお役立ち情報の発信を行い、葬儀業界のwebマーケティングを牽引してきた中川さんは今、どのように葬儀と向き合っていらっしゃるのか、お話いただきました。

葬儀を変える触媒として

前田:はじめに、御社を知らない方へむすびすさんのご紹介をいただけますか?

中川:むすびす株式会社、お葬式のむすびすという屋号でやってますけど、元々はお葬式のアーバンフューネスとして東京でスタートしました。現代、そして未来に向けたお葬式を作っていこうと、フューネラル(=葬儀)を文字って「フューネス」としています。これは、変化するという意味を込めて造語にしました。

ただ新しいものに変化させるという事が目的でもなくて、目的のために変化をすると思っています。みんなが納得するお葬式を未来に向けて作り上げていこう、そのためには今あるものを変えなければいけない。そんな思いを持ってスタートしてきました。

中川社長1

前田:変化ですね...中川さんご自身はテイクアンドギブニーズ時代は結婚式の事業をされたんですよね?そこからお葬式の方に進んでいかれたのは何かきっかけがあったんですかね?

中川:何か始める時、きっかけは一つじゃなかったりしますけど...まずお葬式に対しては結婚式の仕事をするまでは全く視野に入っていませんでした。結婚式の仕事をやらせていただいて、人生の大きなイベントに関わる仕事は非常に素晴らしいものだ、価値のあるものだと感じ、冠婚葬祭、お葬式に興味を持ち始めたというのがきっかけですね。

前田:結婚式もお葬式も、大きなライフイベントの一つですよね。結婚式でのお仕事の経験がお葬式で活かされていると思う瞬間はありますか?

中川:細かいところはいくつもあると思います。マーケティングやマネジメントにもその経験は生かされている。まぁ、同じ人間がやってるのでね。ただ「結婚式でやってきたことをお葬式に持ってきてやってる」と思われているようですが、それはないですね。やっぱりね、別物なのでそんなに簡単じゃないんだよ。逆も然りでお葬式でうまくいってるから結婚式でも、みたいな話も。

ただ、従来の結婚式が悪かったんじゃなくて時代について行けなくなったタイミングでオリジナル性を作り上げ、新しいものをクリエイティブして変化させてきたっていう経験は生きてるんですよ。

だから、お葬式も従来のものが悪いんじゃなくて、時代の変化、価値観や生活様式が変わる中で、フィットするものを私たちが作り上げることができれば、価値あるものが生まれるなっていう考え方というか...

喪に服すから、家族がつくるへ

前田:時代の変化に合わせてというお話でしたが、簡単に済ませて早く日常に戻りたいというご希望あれば、大きいお葬式でみんなで集まって送りたいという希望もあるかと思います。むすびすさんが提供する変化に合ったお葬式はどういう願いを持った人に届けたいとお考えですか?

中川社長2

中川:ちゃんと送りたいっていう人たちですね。ご葬儀をきちんとやりたい、ちゃんとお別れをしたいっていう人たち。だから規模の大小はあまり関係ないですかね。

前田:「規模が小さい」と「簡単に済ませる」は違いますからね。

中川:うん、そうそう。規模の小さいお葬式でも一生懸命やろうとしたらお金が掛かってしまう時もあるね。ただ、お金をかけることだけがいいお葬式かというとそうでもないので。

時代の流れで少し変わってきているところがあって、例えばいいお葬式を作るという話をすると、昔はすごいお金をかけて規模を大きくする。豪華であればいいみたいなところは確かにあった。

で、もう一つ。そのご遺族は喪に服すので、何もしないっていうのがお葬式だったんですよ。周りの人たちが、悲しみの中にある人たちのために一生懸命手伝ってあげるっていう仕組みが出来上がってきたんだけど...

今は周りの人は関係なくて、家族主体でお葬式を作っていくという流れにこの20年くらいでなっている。
本来、喪に服しているはずの家族が、自分たちでお葬式を作っていくことが満足度につながる時代に入ってきて、そこはすごい変わっているところだと思う。

前田:先程からお話いただいている「時代の流れ」というのは、ご家族が自分で手を動かしてお葬式を作るか否か、というところですか?

中川:うん。例えばね、お金をかけずにどうやって満足度の高いものにするかといったら、葬儀屋さんや誰か手伝ってくれる人にお願いして自分たちは喪に服してるんじゃなくて、ご家族自らが手をかけてやることで満足していく時代に実はもう入ってきてるんですよ。

ただ一方で、実はそういった時代に入ってきてるのにもかかわらず、便利さとか簡素化とか、安価なものが求められていく時代にもある。簡単に終わらせてしまえばいいっていう流れも来てるわけですから。

前田:そういう声よく聞きますね。「できるだけ何もしたくないんだよ」と...連絡を取ることすら嫌だから、コロナが親族で集まらない口実になったというお話も...

中川:そういう人は珍しいから目立つけど、ごく一部だと思うよ。あと年を重ねてくるとだんだんそうなりがち。やっぱり長く生きて90くらいになって、連れ合いの人のお葬式を考えた時に、そこまで張り切って葬儀をやるかっていうのは、またちょっと違うので。

ただ、僕らはずっとお葬式の仕事をやってるからわかるんだけど、「お葬式はとりあえずちゃんとやっといたほうがいいよ」っていうのが結論だよね。今、何をどう思おうが、お葬式というのはお葬式としてちゃんとやっておいたほうがいい。

きちんと送る、とは

前田:ちゃんとやる...

中川:ちゃんとやる、というのは亡くなった人に向き合ってしっかりお別れをする。お別れをする、ということはその人の人生とお別れするために、ちゃんと人生を振り返る時間を作る。それがお葬式じゃない。そこで宗教儀礼が必要ならきちんと宗教儀礼をして、親戚なりご友人がいるのであれば、きちんとお呼びしてお別れする場をつくっていく。

前田:損得で判断できる話じゃないですけど、結局お葬式は今だけの話ではなくてずっと続く話ですから、その瞬間の感情だけでジャッジをするのはリスクがありますね...

中川:やっぱり普通に生活してて、今を一生懸命見てしまうからね。普通の生活者がお葬式を長い目で捉えるのは難しいから、葬儀業界の人や宗教者が、意味を伝えていくことが重要かなと思ってね。

前田:そうですね。一方で、その手前の時間、生前からのお付き合いについてはどのようにお考えですか?ご存命のうちから頭の片隅に葬儀のことをおいておく、という考えをお持ちの方も徐々に増えてきたかと思うのですが...

中川:えっとね、結局、昔は地域社会ってのが結構あったわけですよ。町会みたいな地域のコミュニティが最優先される時代背景があって。そういうコミュニティの中で、大体葬儀をやるところって決まっているでしょ。そうすると、地域の人たちで集まっていろんな活動をしているわけだから、みんなお互いの事を知ってるわけだよね。うちは「100人いれば100通りのお葬式」とか「その人の思いを形にする」とか表現をしてるけどそんなことしなくていいんですよ、みんな知ってるんだもん。葬儀の金額も大体わかってるし、その葬儀屋さんもそのお家の事情も知ってるから見積もり云々よりも、阿吽の呼吸の中でやってこれたのが葬儀屋さんだったわけですよ。

我々も西葛西の人たちとそういうお付き合いをしたいけど、もうそういう社会構造じゃないので、ここに存在し続けて、例えば地域のイベントとかコミュニティに参加することで、顔を知ってもらって、何かあった時に頼ってもらえる存在でありたいのがまず一つ。

それと我々はインターネットでマーケティングしているので、そういう人の拠り所になるウェブサイトや情報コンテンツを常に発信し続けなければいけないと思っています。

「こっそり調べたい」を叶える

前田:難しいですね、生前から準備しましょうという風潮がある一方、人間関係が希薄になってますから...
そこでインターネットでのマーケティングですよね。業界では初期から取り組まれていたと思いますが、はじめた当時、成果は出ていたのですか?

2013年当時のアーバンさんHP

(2013年当時のHP)

中川:全く。全く。だって検索する人がいないんだもん。まぁ、いずれなるよね。だって困った時に調べるじゃない、親和性が高いわけですよ。人に聞けないようなこと、こっそり調べたいこと、こっそり問い合わせしたいこと、だからインターネットとの親和性は高いものだと思ってる。予想に反して動きが鈍い気がするけど。

前田:最初にやり始める人が引き受けなければいけない痛みかもしれないですね。

中川:そうそう。使命感もあったよね。我々の業界の立ち位置は何かといったら、やっぱり新たなものを創造するのが役割。新たな価値を生み出すとか。それにみんなが追随してくる。だからモノマネしていただいて、たくさん似たようなことやってほしい。

前田:そこからですもんね。葬祭関連のメディアがどんどん立ち上がったのは。今ではコンテンツで溢れ返ってます。

「突っ込んだご提案」が満足につながる

中川:あと1、2年くらいしたらまともに提案できる葬儀屋が一気になくなるかもしれない。要は、ぽっきりパックの安売りに流れているでしょ。それをみんながやりだすと現場がお客さまに提案したり、先回りしてお客さまのことを考えて作り上げて行く能力が一気になくなっていくんですよ。うちもね、実際経験してるんです。

当社も3年くらい前まで、人を増やした時期があって、その時に社内で人種が分かれていって、従来からやっているお客様に向き合って提案することをやり続けている人たちと、パックやセットを説明して、あとは単なるサービスマンとしてのホスピタリティだけでやっているタイプに分かれるわけですよ。

単価でいうと、後者は提案できないから全然単価が上がらない。お客様の表面的な評価は悪くない。ただ、蓋開けてみると、前者は一生懸命提案してるからリピート率が違うんですよ。突っ込んだ分だけ、満足度は全然違う。単価も違う。それで現場を作り直すって言って、当社が設立以来ずっと大事にしてきたことをやるよって言うと、提案してこなかった人たちはもうできないのよ。だからみんな辞めていっちゃったもん。

今、いろんな所がパックプランになっちゃって、これは安売りのマッチングサイトの影響もあるし、それから人の問題もあると思う。そこまでじっくり人を育てられないし、お客様に個別で提案したり色々カスタマイズすると時間もかかるしそうすると労務にも影響する。だから人材の問題と労務の問題のダブルパンチだよね。それでみんなシンプルな方に流れていって…

…こんな話していいの?

前田:どんどん脱線しながらいきたいので(笑

中川:でも、それがみんな正しいと思っている。競争力がないとシンプルな方に流れるから、また1.2年経つと我々が浮いた存在になっちゃうわけよ。ようやくその人らしいお葬式が認められ始めた雰囲気になってるのに、それが「安い早いうまい」に流れていってスタンダードになっちゃう。

やっぱり手間がかかるし、いい人材がいても、会社自体がその人らしいお葬式を応援していないとできないんですよ。だから葬儀屋さんが「このお客さんサプライズしてあげたい」みたいなレベル感じゃないんだよね、もうこれを仕組みとしてやってくってなると。

前田:サプライズが仕組み化される…

中川:サプライズを仕組み化するっていうか...まぁそうね。

前田:自然とサプライズが起こるようにしていくってことですかね?「その人のためのお葬式」は個別だけれども、その個別の納得した状態を再現性持って実現する仕組みって感じかな...

中川社長3

葬儀業界の未来

前田:うちは葬儀屋さんのクリエイティブ制作の営業するのにいろんな会社さんのサイトを調べているんですけど、むすびすさんに似た取り組みをされている会社さんはあまり見かけません...

中川:どんどん減ってってる気がする。式場の工夫をして雰囲気を出しているところが増えてきたかな。うちはだから逆なんだよね。箱がないからそっちでしかやれない事情もあって。お葬式の中身は別に何でもいいんだけど、そこにちゃんと意味を感じたり納得したり後悔しないかっていうことでその形になってるんだったら全然問題ない。でも、「もっとこうしてあげたかったな」とかっていうのが出てきちゃうのが俺としては許せないわけよ。葬儀屋さんの意味ないじゃんって。

だったら徹底的に安くして場所と物だけ貸して自分たちでやってください、何かあったら手伝いますよくらいの方がいいよね。わざわざ現場に行くわけだから、ちゃんと想いをきいて、後悔しないように提案して。提案を聞いた上でいらないと判断していただければ別にいいんですよ。我々がきちんと説明義務を果たしてるかどうかが、すごく重要。後々、そういうのがAIでできるような時代が来るのかもしれないけど、何が答えなのか導き出しておかないと、AIというツールがあったところで情報がないと学習もできないもんね。

前田:いやー、これから葬儀業界どうなるんだろう...

中川社長4

中川:どうなんだろうね。葬儀の単価に1番大きく影響するのは世相なわけですよ。景気が悪ければ単価下がるし、良ければ上がるし。今景気が悪いの30年くらい続いてるから、単価は下がる。一方で地域のコミュニティがなくなって個が中心の生活になったり、価値観が変わってきてるからね。

前田:景気が良くなったら変わるのか...

中川:まぁ、景気が良くなったら変わるでしょう。何で変わるかっていうと、財産があると相続税がかかるから、それなら最後本人に使ってあげたほうがいいってお葬式代金が高くなる。会社もそう。社葬をやるのも、そういうことだし。経費で落ちるから。利益が出ているから社葬やって、世代交代しますっていうのと、きちんとした会社であることを示す。それがIRにつながったりとか、株主や取引先も含めていろんな信頼とか日頃の感謝の意味とか色々含めて社葬が利用されてたんだけど、今はお金がないからやらないって話になっちゃう。
だからお金があればみんなやりますよ。一方で規模が大きくなるかはわからない。それは多分ないかな。個が中心になってるから。付き合いの広い人はやるだろうし、人付き合いが苦手な人はやらないだろうし。

前田:勉強になります...貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

むすびす株式会社について

会社概要:むすびす株式会社
住所:〒134-0088東京都江戸川区西葛西6-12-16
お電話番号:0120-71-2195
公式HP:https://www.urban-funes.com/
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※本インタビュー企画に料金は一切発生しません

編集後記

「葬式はちゃんとやっておいた方がいい」の一言がとても印象的でした。もちろん、この「ちゃんとやる」はお金をかけることではなく、故人に想いを馳せることです。
やったことのないことの良さや大切さはわかりません。お葬式、特に喪主は何度も経験することではありませんから「なんとなく、今の状況と相談しつつ...」と「今」に目が向いてしまいます。その状況におけるプロの役割は「先」をお伝えすることで、今、最善の決断をできるようにサポートすることです。サポートをするプロは当然頼られる存在でなくてはいけません。
弊社はインターネットをフィールドにしていますが、人の死に向き合う会社の心構えとして、同じことが言えます。背筋が伸びる、ありがたいお話をいただきました。

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前田 陽汰
前田 陽汰
株式会社むじょう 代表
2000年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部オーラルヒストリーゼミ所属。葬送習俗の変化に関する研究を行う。研究内容が評価され2021年度SFC STUDENT AWARDを受賞。2020年5月に株式会社むじょうを設立し、距離と時間を越えて故人を偲ぶオンライン追悼サービス「葬想式」、亡き母へ贈る父の日のメッセージ展示イベント「死んだ母の日展、棺桶に入り自身の生を見つめ直す体験イベント「棺桶写真館」などの企画・運営を行っている。