散骨は本当によくない?法律・宗教的な観点からも解説

散骨は本当によくない?法律・宗教的な観点からも解説

「散骨に憧れるけれど、あまりよくないとも聞く」「散骨は法律に違反していないの?」と不安や疑問を持っている人はいませんか。散骨は法律に違反していませんが、以前は法律違反と思われていたため、散骨を良くないと思う人もいます。また、場所によっては散骨に適していないところもあります。散骨を良くないと感じる理由、宗教的にはどう考えられているか、また散骨に良くない場所について解説します。「散骨は実際、良いのか悪いのかが分からない」とモヤモヤしている人は、ぜひ最後までお読みください。


散骨はよくないと感じる理由

散骨は、ほんの30年ほど前までは違法と考えられていました。1980年代後半、俳優・石原裕次郎の兄である石原慎太郎が「弟の遺骨を、弟が愛した海に撒いてあげたい」と希望しても、世論への配慮から散骨ができなかったほどです。1990年代に入り、散骨関連のNPO団体が「散骨は違法ではない」と訴える活動を行うなどした結果、全国的にも散骨を行う事業者が増え始め、やっと散骨が市民権を得る段階に入ってきました。

しかし、違法か否かにかかわらず、 散骨はよくないと考える人もいます 。散骨はよくないと感じる理由は人それぞれですが、以下のような傾向があります。

  • 遺骨を尊重していないと感じるから
  • お墓参りができないから
  • 環境への影響が心配だから

どれも散骨のデメリットに繋がる論点です。詳しく解説しましょう。

遺骨を尊重していない

散骨は、遺灰を海や山に撒く行為です。この「撒く」という行為は、 見方を変えれば「捨てている」とも言えてしまいます 。よって遺骨を尊重していないように見えるからと、散骨をよくないとする人がいます。

確かに、散骨がよしとされるのであれば、弔いの手段としてではなくたんに遺棄の手段として散骨を選んでしまう人もいるかもしれません。その可能性を考慮してのことでしょう、1991年に法務省は「葬送のための祭祀として、節度をもって」行われる限り、散骨は遺棄罪にあたらないという見解を示しました。

現在では厚生労働省が散骨事業者のためのガイドラインを敷いており、散骨をする際の遺骨は粉状に砕かなければならないとしています。遺骨をパウダー状になるまで粉砕することは、遺骨を「捨てる」のではなく「弔うために撒く」意思があることを示す行為といえるでしょう。

ただ、粉骨をもってしても、やはり「遺骨を捨てているようで、私の考える弔い方とはかけはなれている」と感じる人はいるでしょう。

参考:散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)

お墓参りができない

遺骨を全て散骨してしまうと、 手を合わせる対象がなくなります 。従来のようなお墓参りができないことから、散骨はよくないと考える人がいます。

今の日本で考えられる散骨以外の弔い方は、従来のお墓はもちろんのこと、樹木葬にしろ、合祀墓にしろ、納骨堂にしろ、手を合わせる対象があります。根本的な意味で「お墓をつくらない」弔い方は、散骨のみといえるでしょう。

散骨をして、なお手を合わせる対象が必要という方には、手元供養という選択肢があります。手元に少しだけ遺灰を残しておき、小さな骨壺に入れてリビングに置いたり、アクセサリーに込めて持ち歩いたりするのです。

ただ、やはりお墓参りといえば墓石に向かって拝むのがよいと考えている人にとっては、散骨はよくない選択肢といえるでしょう。

お墓

自然環境への影響

散骨が環境によくないと考える人がいます。散骨をすると海や山にお供え物をする可能性がありますが、花束の包装紙が自然に投げ捨てられたり、包装されたままの菓子や缶入り飲料が海へ投げ込まれたりするのは、確かによくないことです。 散骨する人は、環境に配慮して弔いを行う責任があります

また、遺骨の中に含まれる物質が海洋を汚染するのではと心配する人もいます。とくに火葬した際遺骨に付着する六価クロムという物質が、環境に影響する恐れがあるというのです。

遺骨に付着した六価クロムが環境に影響するかどうか、明確なデータはありません。ただ、焼骨が環境に悪影響だというのなら、従来のお墓に眠っている遺骨もまた危険でしょう。散骨に限った問題ではありません。

どうしても環境への影響が不安な人のため、粉骨の際に六価クロムを無害化する処置を行ってくれる散骨事業者もあります。

散骨は法的によくないの?

散骨が法的によくないのではと考える人もいます。前述したように、以前は、散骨は違法と考えられていました。「墓地、埋葬等に関する法律」に、以下のような文章があるためです。

第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
引用:墓地、埋葬等に関する法律

散骨を法律違反ではないと主張する人は、「散骨はあくまで遺骨を撒く行為であり、埋める行為ではないため、法律には違反しない」と解釈し、 現代ではこの解釈が広く受け入れられています

よって散骨は違法とはいえませんが、散骨に関連する法律は今のところなく、積極的に合法であるともいえない状況です。ただし、厚生労働省が散骨に関するガイドラインを出しているのをみると、国が散骨を弔いの一手段として認識しているということだけはいえるでしょう。

散骨は宗教的によくないの?

散骨は宗教的によくないのではと考える人もいます。 散骨への捉え方は、宗教によって違うといえるでしょう 。各宗教とも、散骨を具体的に指して善し悪しを明示しているわけではありませんが、それぞれの捉え方を彷彿させる言い伝えや出来事、最近の動きについて解説します。

仏教

浄土宗の宗祖である親鸞は、弟子たちに「私が死んだら遺体を賀茂川に流して、魚の餌にするように」と言い残しています。「死者の弔いに気を煩わせる必要はない」という意味で言ったと伝えられていますが、親鸞自身は亡くなった後に自然へ還り、お墓を残す必要はないと考えていたといえるでしょう。この場合、遺体を直に川へ流すわけではないため散骨とは違いますが、 「お墓をつくらない」「自然に還る」の2点が散骨と共通している といえるでしょう。

ただ、先祖代々のお墓を持って当たり前とされてきた近現代の日本仏教において、長く散骨へのアレルギーがあったことは確かです。散骨がようやく市民権を得てきた今では、海洋散骨の際に遺族と一緒に乗船してお経を唱えてくれるお坊さんも増えてきています。

神道

散骨の「骨を撒く」や「お墓をつくらない」という側面ではなく、「故人を自然に還す」という側面に目をやれば、 神道は古来より故人を自然に還す葬法を行ってきました 。神道の埋葬法は、ほとんどが土葬であるためです。

一方で、土葬を中心とすることから当然ではありますが、神道で「骨を撒く」行為が推奨されていたり、頻繁に行われていたりといったケースは確認されていません。散骨を行ったことで有名な天皇に淳和天皇がいますが、神道の教義に則り散骨を希望したというよりも、葬儀の簡略化を遺詔したことによるものといわれています。

キリスト教

キリスト教では長く火葬が禁止され、土葬が推奨されていました。来るべき復活の日に、死者がキリストとともに復活すると考えられてきたためです。火葬して遺骨になってしまえば、復活することができません。よって罪人を処刑するときは、あえて後に復活できない火刑が選ばれることもありました。

火葬がなければ散骨もありません 。よってキリスト教には散骨という概念がないといっていいでしょう。

現代では土地不足や衛生面への配慮から火葬を容認するキリスト教圏が増えてきました。すると「火葬した遺骨はお墓に入れなければならない」といった前提もないからか、抵抗感なく散骨を受け入れる国が多いようです。

キリスト教

その他の宗教

世界には多くの宗教があります。なかでもとくに日本人が耳にすることの多い、儒教とヒンドゥー教の2つについて、散骨への考え方を軽く紹介します。

  • 儒教
    中国生まれの儒教は、日本にも多大な影響を与えた宗教であり、学問です。先祖を尊ぶ考え方があるため、先祖をあがめる対象となるお墓は重要視されます。よって、散骨の考え方とは相性が悪いといっていいでしょう。

  • ヒンドゥー教
    ヒンドゥー教には水葬の文化があります。火葬した後の遺骨や、ときには遺体そのものを、聖なる川であるガンジス川に流すのです。ガンジス川は生と死を象徴する川とされており、遺骨や遺体を流せば、故人はこの世の苦しみから解放されるとされています。よって、ヒンドゥー教では散骨が推奨されているといえます。

散骨にふさわしくない場所

散骨は違法ではありませんが、遺灰を撒くのにふさわしくない場所があります。それは、以下の3つの場所です。

  • 条例で禁止されている場所
  • 周辺環境への影響が大きい場所
  • マナー的に問題がある場所

それぞれ、なぜふさわしくないのか、例えばどんな場所なのかを解説します。

条例で禁止されている場所

条例で散骨が禁止されている自治体があります。その自治体内では、散骨ができません。もし散骨を行うと罰則が科される場合があるため注意しましょう。

また、散骨自体を禁止していなくても、散骨可能な場所について明文化されている条例もあります。その場合、条例が承認している場所以外では、散骨ができません。

散骨を行いたい場所が決まっている場合は、 その区域が含まれている自治体の条例をよく調べてみましょう

周辺環境への影響が大きい場所

漁場の近くや水源地など、 そこへ散骨してしまうと風評被害に繋がる恐れのある場所 は、散骨にふさわしくありません。散骨事業者であれば周辺の関連事業者に許可を取り、クレームの来ない場所を散骨場所として用意していますが、自分で散骨をしたい場合は要注意です。

マナー的に問題がある場所

海水浴場の近くなど、たくさんの人目がある場所は、散骨にふさわしくありません 。ここまで解説してきたように、「散骨はよくない」と考える人が散骨を目撃してしまう可能性があるためです。トラブルに発展する危険もあるため、人目のある場所は避けた方が無難です。

まとめ

以上、散骨はよくないのかについて、さまざまな側面から解説しました。散骨は法律違反ではありませんが、方によって守られているともいえません。不要なトラブルを避けるため、散骨をする際にはガイドラインを遵守し、マナーを守って行うようにしましょう。

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監修・奥山晶子
監修・奥山晶子
株式会社むじょう 編集者
冠婚葬祭互助会に従事し、その後おもだか大学名義で「フリースタイルなお別れざっし 葬」(不定期)を刊行。現在は葬儀や墓など終活関連の記事を手がけるライターとして活動中。2012年より2年間、NPO法人葬送の自由をすすめる会の理事をつとめる。主な著者に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』がある。