残された家族のケアとは?具体的な方法や寄り添える言葉の掛け方

残された家族のケアとは?具体的な方法や寄り添える言葉の掛け方

大切な人を亡くした時、故人の家族は大きな悲しみに直面します。
もしかしたら、心理的なことや実務的なことの両面で、誰かの手助けを必要としているかもしれません。しかし、助けを求めていても、大切な人を失ったショックから、自発的に「助
けて」と声を発することができないとも考えられます。

喪失体験により、深い悲しみを抱えている状態を「グリーフ」といいます。
グリーフの状態にある人を支え、自分の力で回復するための手助けをすることを「グリーフ・ケア」といいます。

グリーフの状態や、回復する時間は、人によって異なります。長い人では何十年もグリーフを抱えたまま日々を過ごすケースもあります。
そのため、グリーフ・ケアについて簡単に説明することは難しいのですが、この記事ではケアが必要な理由と、ケアの助けになる方法をご紹介します。

※本記事で使用している「残された」という表現は誤りで、本来は「遺された」という表現が適切です。
しかし「残された」と検索されることが多く、本記事を必要としている方に届けるため「残された」という表現をさせていただくこと、ご了承ください。


残された家族にケアが必要な理由

事故死のような突然の別れでは、ショックが大きいことは言うまでもありません。
一方、病気などの理由で、離別をあらかじめ察知している場合は、悲しみを予期できるということで 「予期悲嘆」 といい、亡くなった直後の悲しみを比較的、軽減できると言われています。
しかし、いずれにしても家族や大切な人との別れは、人生の中で強いインパクトをもって、当事者に受け取られます。

大切な人を亡くすことは、大きなストレスです。その直後は、日常生活をスムーズに送ることさえ難しい場合もあります。
また、大切な存在を失ったときに生じる悲嘆や反応は、亡くなった状況や故人との関係など、さまざまな要因によって大きく異なります。

心理的な負担を抱えているため

遺族が抱える負担として、もっとも始めに思い浮かぶのは、大切な人を亡くしたショックで抱える心理的な負担です。
この場合、遺族が支援を必要としていることが想定されます。

喪失体験によって引き起こされる感情は、悲しみ、落胆、後悔、怒り、孤独感などがあります。他に、ストレス反応として不眠や食欲低下、胃腸障害などの症状が出ることもあります。

このような反応は 「グリーフ反応」 と呼ばれ、大切な人を亡くしたときに起こる、ごく普通の反応です。
人によっては、自己肯定感が低い時期が続いたり、日常生活に支障が出たりすることもあり、受診が必要な場合もあります。

ストレス

法的な手続きが必要なため

法律に基づき、故人の死後、早めに行わなければならない事務的な手続きが数多くあります。
家族の死亡後、すぐに行う必要がある公的な手続きの期限は、短いもので 10~14日 です。
なかには遅れると5万円以下の過料が課されるものもあり、軽視しないほうがよいでしょう。

  • 国民年金受給停止(10日または14日以内)
  • 介護保険資格喪失届(14日以内)
  • 住民票の世帯主変更届(14日以内)
  • 国民健康保険資格喪失届(14 日以内)

これらの慣れない手続きを、心理的な負担をかかえた状態でこなしていく必要があり、多くの場合、負担がいっそう上乗せされます。

他にも、期限が短い手続きとして、以下のようなものがあります。

  • 雇用保険受給資格者証の返還(1カ月以内)
  • 故人の所得税準確定申告(医療費控除を含む)・納税(4カ月以内)
  • 相続税の申告・納税(10カ月以内)

実務的な支援が必要なため

葬儀の後処理や、法要の準備、ほかにも相続の内容をしらべるため、 遺言書の確認や、故人の預貯金を整理する作業などは、遺族が中心となる実務 です。
しかし、故人の死後に生じる、このような特殊な実務に時間をとられ、日々のルーティーンが疎かになった結果、何かしらの問題が起きてしまうことは十分、考えられます。

特に、仕事や、介護や子育てといったお世話が必要な家族の対応は、以前と変わらずもとめられます。しかも、介護や子育ての対象となる家族も、グリーフを抱えている可能性が高いため、いつも以上に対応に難しさを感じるケースもあるでしょう。

残された家族をケアする具体的な方法

では、残された家族に対して、どのように接すれば、具体的なケアをおこなうことができるのでしょうか。
主な態度として、「寄り添って話を聞く」「 家事や育児のサポート」「法的な手続きを確認する」「経済的なサポート」などが考えられます。
以下で、具体的に紹介していきます。

ただし、 グリーフ・ケアには、「すぐに効く」とか、「常にベストと言える解決法」はありません
以下の内容は、あくまで情報として頭に入れる程度にお考えいただき、その場の状況や、ご自分と相手との関係性を考慮して、悲しみを抱えている人に対して無理強いしないようにしてください。

寄り添って話を聞く

まず、あなたが故人の家族とどのような関係でも、 寄り添って話を聞く ことは可能です。
その時に大切にするのは、相手から話すのを待ち、言われたことに共感することです。

死別による悲嘆や反応は、一人ひとり異なり、極めて個人的な体験です。
話をしている人が言ったことを、あなたの考えで解釈してしまうと、相手はきっと口を閉ざすでしょう。
このとき、悲しみを抱えている人の中では、自分の感情と異なる「違和感」を覚えたり、「きっと誰にもわかってもらえない」という思いが首をもたげたりしています。場合によっては、怒りの感情となって表れることもあります。

とにかく、相手の話を聞くときは、受け入れて共感する、ということが大切です。
話によっては共感することが難しい場合もありますが、相手が発したワードを復唱して「○○という気持ちなんだね」と言ったりして、「聞いているよ」という姿勢を示すことが大切です。

もしかしたら、まだ誰かに何も話せない、という段階の人もいるかもしれません。悲しんでいるように見えない人の方が、悲しみが深いこともあります。
そういう人には、話すことを無理強いしないようにしましょう。

特に、死別後 1 年目の故人の誕生日や、クリスマスなど家族が楽しく過ごした日は、「記念日反応」というかたちで悲嘆がつよく表れやすいといわれます。
節目の日や、その付近で遺族の話を聞く機会があれば、一緒にゆっくり過ごしてみましょう。

気持ちを残された家族のペースで話し、吐き出すことが、悲しみを癒すきっかけになります。

家事や育児のサポート

何かの手続きや、家の中の整理整頓をしているときに、 家事や育児・介護のサポート をしてくれる環境があると、遺族はとても助かるのではないでしょうか。
人によっては、家の中に誰かを入れることを嫌がる場合もあるため、お子さんと一緒に外出してあげたり、介護サポートをする施設の利用時間をふやすように提案したりすることは可能ですよね。

「家族の面倒は、家族でみなければならない」と思い込んでいる真面目な人は、少なくありません。
ましてや、家族が亡くなったという大変なタイミングで、「サポート施設の利用時間を一時的に増やす」ことなどは、誰かに提案されるまで盲点となっているかもしれません。

これ以外にも、葬儀や買い物のサポートで手助けすることが可能です。

法的な手続きを確認する

すでに見てきましたが、故人の死後、家族が行うべき手続きは多くあります。
これらの手続きを、葬儀後の落ちつかない状況で処理することは、遺族にとって大きな負担です。
人や状況によっては、葬儀の後処理が大変で、その後の手続きの確認がまったく手につかないこともあるでしょう。

そのような場合、 手続きの種類や期限、手続きに行く場所の確認などを一緒におこなう ことで、助けになります。
法的な手続きだけでなく、携帯電話や公共料金などの契約先を1つ1つ確認することも、遺族の負担軽減につながります。

手続きに行く場所は、市町村の役場のほかに、年金事務所、故人の職場などです。
公的な場所での手続きでは、必要な書類もありますので、電話でそういったものの確認をとることもできますね。
相続に関する手続きなど金銭が絡むことは家族にまかせて一線を引き、そのほかの手続きをスムーズに進められるようにサポートしましょう。

可能であれば、手続きする場所に同行するのもよいでしょう。
慣れないことが続き、間接的に遺族が心理的な負担を感じている場合があります。もし、疲れているように見えたら、一休みするよう提案することもサポートの内です。

経済的なサポート

故人や遺族との関係にもよりますが、家族が経済的に困窮している場合、 金銭的なサポート をすることは可能性として挙げられます。
しかし、多くの場合は、金銭的に支援することにより遺族との関係性の変化が想定されるため、直接、金銭をサポートするケースは少ないでしょう。

ここでは、公的な機関による死亡給付金制度を紹介します。こういったものがあることを遺族に伝えることでサポートになります。

  • 葬祭費、埋葬料
    死後2年以内に手続きをすると、国民健康保険の場合は葬祭費、健康保険の場合は埋葬料を一定金額受けとることができます。
    国民健康保険の場合は市町村役所、健康保険の場合は勤務先、または社会保健福祉事務所へ申請します。

  • 遺族年金
    故人が加入している年金制度によって、支給される年金の名称が異なります。
    「遺族基礎年金」は自営業者などとして国民年金に加入している場合、「遺族厚生年金」は会社員や公務員などとして厚生年金や共済年金に加入している場合です。
    支給対象や条件はさまざまですので、年金事務所や年金担当窓口に確認しましょう。

  • 児童扶養手当認定請求
    世帯主が亡くなり、ひとり親家庭になった場合に請求できます。
    18歳までの児童(障害児の場合は20歳未満)を養育し、養育者の所得が基準を下回る場合に対象となります。居住する市区町村の役場で手続きをします。

その他、生命保険の死亡保険金、失業保険の未払金などがあります。

残された家族のケアをしてくれる支援の場

現在、公的な機関による支援制度というものはありませんが、 死別の悲しみを話せる場 があります。
グリーフ・ケアのアドバイザーや専門家によって行われる個人カウンセリングや、グリーフを抱えた人が集う「わかちあい」の会などです。
どちらにも、グリーフ・ケアの専門家が関わっています。

つらい気持ちを安心して話せる場があること、自分の気持ちに心から共感して理解してくれる人がいることは、最大のケアとなります。
こういった会には守秘義務があるため、安心してつらい気持ちを打ち明けることができます。
また、同じような境遇の人の話を聞くことで、これまで周囲の人には理解されなかった思いを「わかってもらえた」と感じ、回復につながるのです。

わかちあいの会は、さまざまな団体が主催しています。
グリーフ・ケアのアドバイザーや専門家を育成・輩出する団体による会や、任意団体によるものまでさまざまです。
対象を自死遺族に限定している会もあれば、だれでも参加できる会もあります。

住まいの近くにそういった場がない場合、近年ではオンラインでの開催方法をとっているところもあります。いずれも、事前の予約が必要です。

残された家族をケアするときの言葉掛け

残された家族に対しては、どのような言葉をかけることが適切でしょうか。

ここでは、

  • 通夜や葬儀といった一般的な場での言葉かけ
  • 自死で残された家族への言葉かけ
  • グリーフを抱えた人に対して言ってはいけない言葉
    をご紹介します。

通夜や葬儀でかける一般的な言葉

基本的なお悔やみの言葉は、「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」というふたつの言葉 です。

(例文)
「このたびは、誠にご愁傷様です。突然の訃報に驚いております。」
「このたびのことは、思いがけないことで、誠に残念です。心よりお悔やみ申し上げます。」

「ご愁傷様」には、故人を亡くしたことに対する悲しみと、遺族へのいたわりが込められています。
一方、「お悔やみ申し上げます」には、心からの悲しみと、故人の死を残念に思うという気持ちが込められています。

自死で残された家族にかけられる言葉

つらい状況にある人を前にすると、早く元気になってほしい、という気持ちから、「何か言わなくては」と思うかもしれません。
しかし、 遺族は「しばらくそっとしておいてほしい」と思っていることが多いようです

心のふたを無理にこじ開けないことが大切です。
「必要な時はそばにいるよ」「手伝えることがあったら連絡して」という一言を伝えるだけでも、助けになります。

無理に言葉をかけようとせず、場合によっては、背中をなでたり、手を取ったりして気持ちを伝えることもできます。

残された家族にかけてはいけない言葉

何とか援助しようとして、悪気なく、はげましの言葉をかけてしまうことがあります。しかし、このような言葉が、逆に悲しんでいる人を傷つけてしまうことがあります。

具体的には、「がんばって」「しっかりしなさい」などの気持ちを鼓舞するような言葉、生活態度についてのアドバイス、「見た目より元気」などの過小評価、「あなたの気持ちはわかる」といった言葉です。
こういった言葉は、「聞く側の無理解」として受けとられ、悲しんでいる人を余計に傷つけてしまう可能性もあります。

悲しみや苦しみを抱えている人は、死別という個人的な体験を、その人だけの大切なものとしています。
気持ちがわかるといわれても、「わかるわけない」と思ってしまったり、がんばってといわれると、「これ以上、がんばらなければならないの?」と苦しくなったりするのです。

遺族にとっては、このような言葉が周囲の心ない言葉と感じられてしまい、傷つきながら、反発する気力もなく、逆にそうでない自分を責めてしまうこともあります。

周囲の人が死別の悲しみを解決しようとせず、悲しみを抱えた遺族が必要なときにそばにいてあげられることが、もっとも大切 です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
グリーフを抱えた遺族に、何か言葉をかけてあげたい、と思っても、その言葉が逆効果になってしまっては、お互いにつらい思いをしますよね。
人によっては、長いあいだ、死別の苦しみを感じることもあります。周囲の人は、早く普段通りに戻らないかな、などと急かすことはしないで、辛抱強く回復を待ちましょう。

そのためにできる支援は、死別の悲しみを味わえる状況を整えることかもしれません。
実務的なことへの手助けで、少しでも遺族に心の余裕ができればいいですよね。

周囲のサポートが少ない人では、グリーフ自体が病気につながる場合もあります。
手助けできることはないか、と折に触れて声をかけ続けることで、もし遺族がふっと悲しみを吐き出す場面に立ち会えたら、心配しているあなたは少し安心できるかもしれませんね。

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監修・奥山晶子
監修・奥山晶子
株式会社むじょう 編集者
冠婚葬祭互助会に従事し、その後おもだか大学名義で「フリースタイルなお別れざっし 葬」(不定期)を刊行。現在は葬儀や墓など終活関連の記事を手がけるライターとして活動中。2012年より2年間、NPO法人葬送の自由をすすめる会の理事をつとめる。主な著者に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』がある。