「拝啓、柩の中から展」を開催しました!
2024年5月20~21日にかけて、京都にて「拝啓、柩の中から展」を開催いたしました!棺桶写真館、供養RAVEに続き、むじょうとしては三つ目の棺桶を使ったイベントです。
今回はTBWA HAKUHODOさんの「Disruption® Lounge」というイベントの一環として、「終わりのはじめ方」をテーマに展示を企画しました。本イベントでは、お寺という場を日常に溶かす取り組みを進めている佛現寺さん、人・事業・地域を繋ぐ取り組みを行う京都信用金庫さんの会場をお借りし、それぞれの場所でしかできない展示となりました。
本レポートでは、その様子をご紹介します!
どんな展示なの?
本展示では、これまでむじょうが行ってきた入棺体験イベントとは違うゴールを設定しました。これまでの入棺体験が目指してきたのは、死について考えることで、生を見つめ直す機会となること。今回は「終わりのはじめかた」というDisruption® Lounge全体のテーマに沿って、「終わりに向き合うメンタリティの獲得」をゴールに据えて企画しました。
終わり、とは誰もに等しく訪れるものです。
昨今では葬儀の方法や安楽死など、どのように終わるかを自分で考える“Demise Duality(終わりの多様性)”が注目され始めています。Disruption® Loungeは、こうしたトレンドを受けて企画されたイベントでもあります。
その一方で、日常の中でいきなり「終わり」について考えることは簡単ではありません。
考えた方がいいのはわかっているけれど、今じゃなくてもいいじゃないか。
考えてみようかな、と思うこともあるけれど、何となく嫌だ。何となく怖い。
そんな漠然としたネガティブな感情は、多くの人が感じたことのあるものだと思います。
では、どうやってそのよくわからない嫌悪感を乗り越え、「終わりの始めかた」を考えるきっかけを作るか?
むじょうでは、「終わり」について考え始めることが難しいのは「終わり」そのものへの解像度が低いからではないか、という仮説のもと、コンテンツを企画しました。
今回の「終わり」の対象は「自分の死と連動して生じる物事」とし、「棺桶に入った時に思ったことを、自分に宛てた手紙に落とし込んでみる」という内容のコンテンツです。例えば、会社経営者であれば自分が死んだら会社はどうなるのかなど、言語化を通じて解像度を上げることで、「なんとなく嫌だ」という状態から一歩前進する事を目指しています。
言うなれば、自分の人生にとって大切なものが何か、自分から自分に宛てた言葉に落とし込むこと、そしてそれがいつか終わることを正しく怖がってもらう、というのが今回の展示の目標でした。
本展示では、棺に入る前と後にそれぞれワークを行い、「終わり」の解像度を高める工夫をこらしました。
【入棺前ワーク】六問銭
日本の葬儀では、亡くなった方が三途の川を渡るための渡賃として、お葬式で「六文銭」を棺に入れる慣習があります。そんな文化をモチーフに、本展示のために制作したのが「六問銭」。
棺に入る前に、自身の人生について振り返るための六つの質問に答えるワークです。6問のセットは全部で6種類あり、自分がどの問いに答えるかはフローチャートから決めていきます。
普段聞かれることのない、正解も間違いもない質問ばかりが並ぶ六問銭に、時間をかけて悩まれるお客様がほとんど。このワークが一番難しかった、との声もたくさんいただきました。
【入棺後ワーク】1ヶ月後の自分に手紙を書く
棺に入るという体験はなかなかショッキングなものですが、時間が経てば感じたことも考えたことも薄れてしまいます。六問銭に答える中で考えたこと、棺の中で頭に浮かんだことを、ひと月先の自分に宛てて書くことで整理するためのワークです。
次から次へと書きたいことが浮かぶ方もいれば、1行1行を噛み締めるように書かれる方も。書き終えたお手紙は六問銭と一緒に封筒に入れ、シーリングスタンプを捺して封をします。封筒は1ヶ月後にむじょうから開封通知が届くまで、来場された方ご自身に保管していただきました。
また、TBWA HAKUHODOさんが用意して下さった「余命時計」も展示内に設置させていただきました!
生年月日や居住地などから、独自のアルゴリズムで自分の余命を算出してくれるシステムです。あくまで参考とわかってはいても、何分、何秒という単位で自らの残り時間を可視化されるのは衝撃的なもの。目の前の棺に入るのは大体いつになるのか、皆様思いを巡らせていました。
この一連のワークを二日間にわたり実施しましたが、会場が変われば展示の雰囲気も一変。
ここからはそれぞれの様子をレポートします!
【1日目】 佛現寺にて
ぐるりとお堂を一周するようにパネルが並び、ご本尊の目の前に白い棺が鎮座する様はインパクト抜群でした!1日目の入棺体験では、入棺前にご本尊に手を合わせる時間をとりました。お寺ならではの厳かな雰囲気の中、自身の終わりが身に迫って感じられたとの声もいただきました。
展示は完全予約制でしたが、開かれたお寺の門から棺に目を留め、飛び込みで参加されるお客様も。お香と畳の香りの中、初日から多くの方にご来場いただき、終わりに思いを馳せていただくことができました。
展示終了後には「てらのみ」特別版として、棺を囲んで日本酒をたのしむイベントが実施されました!
日本酒片手に棺の周りで談笑する空間は、どこか通夜振る舞いのような雰囲気でした。
【2日目】京都信用金庫 QUESTIONにて
京都信用金庫が運用する共創施設であるQUESTION。そのチャレンジスペースをお借りしての展示となりました!
昼から賑やかなカフェ・バー・ラボ「河原町御池南東1F」の奥に構える棺は、1日目とは違った異彩を放っていました。「こんなところに棺桶が?」と吸い込まれるように展示を一周されるお客様もいらっしゃいました!
1日目とは対照的に、棺桶に入った途端に賑やかな空間から少し切り離されるような不思議さがありました。どちらの会場でも、六問銭のワークを経て体験する棺の中は、参加者の方に今までとは違った解像度の「終わり」を感じる一場面となったようです。
展示終了後にはイベント全体の総括として「主文、おわりのはじめ方」と題したトークセッションが行われ、60名を超える方々にご参加いただきました!
佛現寺副住職である油小路和貴さん、TBWA HAKUHODO Disruption Strategist 田貝 雅和さん、むじょう代表の前田の3名が登壇し、現代日本の終わりに対するメンタリティや、これからどうやって終わりを受け入れていけるか、たっぷり語り合う90分となりました。
終わりに
先月21日には1ヶ月経過の通知も送信。「拝啓、柩の中から展」は正式に全て完了となりました。
むじょうとしても初めての挑戦が多かった本展示。製作背景についてはこちらの記事でご紹介していますので、よろしければぜひご一読ください。
多くの方のご協力のもと、無事に展示を終えることができました!参加して下さったみなさま、運営に携わって下さったみなさま、本当にありがとうございました!