樹木葬とはどんな供養方法?費用相場やメリット・デメリットを知ろう

樹木葬とはどんな供養方法?費用相場やメリット・デメリットを知ろう

現代では「樹木葬(じゅもくそう)」という言葉を聞いて、「具体的な供養方法を知っておきたい」と思う人が一定数いるでしょう。
耳なじみのよい「樹木葬」というワードからは、「健康的で明るい感じ」「自然に還る」「樹木を墓標とする埋葬」「木に見守られる」などの漠然としたイメージが連想されます。

しかし、樹木葬の具体的な手続きや、のちの管理方法についてまでくわしく知る機会は、ほとんどありません。樹木葬は1990年代から注目されはじめた埋葬方法です。そのため、樹木葬の実情を知る人は、さほど多くないといえます。

また、樹木葬にはさまざまな選択肢があるため、実際に樹木葬の経験がある人にたずねたとしても、かならずしも同じ内容になることはありません。現状では、今後、埋葬される場所を購入する段階になってはじめて、樹木葬の内容や相場などを知ることになります。

ここでは、樹木葬がどのような供養方法なのか、詳しくご紹介していきます。


樹木葬とは樹木を植えて埋葬する自然葬

樹木葬は、 墓石の代わりに樹木をシンボルとする、永代供養をベースとしたお墓 です。このように言われると、「立っている樹木のすぐ下に埋葬する」あるいは「埋葬した上に樹木を植える」と考えてしまいますが、実際、そのようなケースはほとんどありません。

樹木葬をおこなうには、自治体から許可を得た墓地(霊園)に遺骨を埋葬します。樹木葬の埋葬の方法は、墓地によって異なります。そのため、事前にどのような埋葬の方法をとるのか、かならず下調べをしておくことが大切です。
たとえば、墓地の中央にシンボルとなる樹木を植え、その周辺の区画に埋葬するケースや、草花や芝生で彩られたガーデン風のものなどがあります。
何も調べず、安易に契約してしまうと「思っていた樹木葬と違う!」というトラブルにつながりかねません。

樹木葬は新しい供養のスタイルですが、自然志向のコンセプトや、現代の事情にそった供養方法を選択できる点が、墓地の購入を検討する人々から共感を得て、急速に支持されています。今日(こんにち)では公共・民間・宗教法人のいずれにおいても整備が進んでおり、今後の需要増加にそなえた準備がおこなわれています。

樹木葬

樹木葬は法的に許可が必要

遺骨の埋葬に関する法律には「墓地、埋葬等に関する法律」があります。そこには「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない。」と定められているため、樹木葬をおこなうことができるのは、 自治体から許可を受けた墓地のみ となります。自宅の庭や、近隣の山林などへ埋めることはできないほか、現状、法的にグレーゾーンである散骨とも異なります。

樹木葬は、あくまでお墓の一種と考えましょう。

樹木葬は永代供養が一般的

樹木葬は、 跡継ぎを必要としない永代供養が一般的 です。つまり、樹木葬の利用者として、お一人様や夫婦などが想定されているのです。

永代供養は、遺族や子孫にかわって霊園や寺院などが遺骨を管理・供養することを指します。永代供養を選択することにより、納骨後の供養を遺族や子孫が主体となっておこなうのではなく、すべて霊園や寺院に任せるということになります。
事前に供養料をおさめるだけで、その後の年間管理料はかからないところがほとんどです。

樹木葬がひろがる背景には、お墓の購入時の費用や維持・管理にかかる負担を軽減したい、心配を減らしておきたい、という考えがあるようです。

樹木葬の埋葬の仕方は3つ

樹木葬というと「自然に還る」というイメージを持ちますが、あくまでお墓の一種です。そのため、 遺骨を自然の中にまく散骨とは異なります

樹木葬の墓地のタイプは、おもに2つあります。

・墓地の許可を受けた山林に遺骨を埋葬するタイプ(里山型樹木葬)
・寺院や墓地に樹木葬専用エリアが設置されているタイプ(都市型樹木葬)

広大な土地が必要な里山型樹木葬は、郊外にあるケースがほとんどです。

さらに、樹木葬の埋葬の仕方は3つあり、合葬型(合祀墓)、集団型(共同墓・共用墓)、個人型から選択することができます。
以下で、詳しくみていきましょう。

他の人の遺骨と合わせる合葬型

合葬型(合祀墓)は、永代供養墓の一種で、 複数の遺骨をあわせて埋葬する方法 です。基本的に、遺骨は骨壺からとりだされ、他の人の遺骨と一緒に埋葬されます。

個別に埋葬される方法よりも費用をおさえることができ、年間管理費が不要の場合が多いです。
一方、埋葬後は他の人の遺骨と区別がつかないため、後から特定の人の遺骨を取り出すことができません。また、他人と一緒に納骨されることを、こころよく受け入れられない人もいます。

骨壷などで遺骨を分ける集団型

集団型(共同墓・共用墓)は、 特定の単位でつながりをもった数名分の遺骨を、1つの大きなスペース(墓地区画)におさめる方法 です。この埋葬方法では、遺骨は骨壺や骨袋などに入った状態となるため、個々人の遺骨は区別されている状態となっています。

1つの墓地区画を共同で使用するのは、血縁者に限りません。管理者側の募集によってランダムに決まることもあれば、友人どうしで一つの墓に入ることを選択するケースもあり、さまざまです。

個々の区画に埋葬する個人型

一人ひとりに専用の区画があり、そこに個別に埋葬されます 。合葬墓に比べ、個別に祀っている感覚をもつことができます。遺骨は骨壺ごとおさめたり、パウダー状に粉骨して専用の小さな容器や、木綿等でできた骨袋などにうつしかえたりする場合があります。
また、オプションで石や銘板を設置して、名前を石に刻むこともできます。

ただし、契約の時点で、区画の使用期限が設定されていることがほとんどです。その理由は、継続的に埋葬スペースを確保するためです。使用期間を満了すると、遺骨は合葬墓へうつされ、その後は永代供養となります。オプションの石碑や銘板もはずされます。

樹木葬にかかる費用相場

樹木葬はあまり墓石を使わず、また遺骨を埋葬するだけの小さなスペースで済むため、 一般的なお墓を建立し、代々、維持・管理していくよりも費用が安く抑えられる といわれています。

しかし、樹木葬の価格には、ケースによって大きな差があるようです。なぜかといえば、タイプによって違いが生じるのはもちろん、立地によって永代使用料に違いがあるためです。
永代使用料は、一般的なお墓でいうところの墓地代にあたるため、地価による価格の影響を受けます。埋葬スペースが狭くても、都心の一等地や、交通アクセスの良い場所は、使用料が高くなる傾向にあります。

樹木葬の購入時にかかる費用には、「永代使用料」「埋葬料」「彫刻料(銘板料)」「管理料」があります。
ほとんどの場合、提示されている価格のプランには、永代使用料と埋葬料が含まれています。彫刻料(銘板料)は、オプションです。
別途、管理料として、生前の間や、一定期間のみ必要な場合もあります。契約の前に、よく確認しましょう。

費用の相場は、20万円〜80万円程度です。埋葬の種類や納骨される人数、個人型の場合は契約年数によっても変動します。以下は、目安として参照してください。

  • 合葬型…5万円~20万円
  • 集団型…15万円~60万円
  • 個人型…20万円~80万円

樹木葬の価格表示は、基本的に1霊あたりの価格が提示されています。ですので、樹木葬を選択する場合は、埋葬する人数分の費用がかかることを把握しておく必要があります。夫婦など、2霊分の料金を提示しているところもあります。

樹木葬が安価だと思い込んでいると、利用人数が増えたときに、逆に割高になってしまうケースも考えられます。
家族全員で利用するお墓を探すのであれば、一般的な墓石のほうが費用がかからずに済むかもしれません。よく検討することをおすすめします。

樹木葬のメリット

近年、選ばれている樹木葬には、どのようなメリットがあるのでしょうか。現在、樹木葬を検討している人にとっては、知っておきたい情報ですよね。以下で確認していきましょう。

墓地の管理や継承がいらない

基本的に 樹木葬は永代供養であり、事前に管理費を支払っているので、遺族や子孫が墓地を管理する必要がありません 。子どもがいない人や、墓地の管理を任せることに抵抗がある人に、樹木葬が選ばれています。

お墓を建てるより費用が抑えられる

1霊または2霊など、少数の遺骨を埋葬するケースでは、 お墓を建てるよりも費用を抑えられます 。年間の管理費も、生前の間や使用期限があるケースがほとんどであるため、維持管理にかかる費用について、長期にわたる心配がいりません。

宗旨宗派にこだわらない

寺院が管理している墓地でも、樹木葬の区画は檀家にならなくても、無宗教であっても受け入れている場合があります 。このように宗旨や宗派にこだわりのない人にとっては選択しやすい内容となっています。
ただし中には檀家専用の樹木葬墓地もありますので、検討の際は、よく確かめて候補に入れましょう。

樹木葬のデメリット

さまざまなメリットのある樹木葬ですが、一方でデメリットがあることも視野に入れておく必要があります。
一般的なお墓と違うため、墓標がなく、埋葬された位置がわかりづらい 、といったケースもあるようです。

樹木や花が枯れることがある

樹木葬の墓地の管理は、契約した時点で管理者に一任されています。ですから、購入を検討した時期と比べて、埋葬されている場所の光景が変化する場合もあります。
また、 気に入らないからといって、ガーデニングのように自分で手入れすることはできません

墓標がわかりにくい

一般的なお墓であれば、墓石に手を合わせることができますが、樹木葬の場合は、樹木葬全体に向かってお墓参りをするかたちになります。やや漠然とした印象のお墓参りとなるため、 埋葬されている場所とは別に共用の参拝スペースが設けられている墓所も多くあります

アクセスの悪い場所がある

樹木葬の墓地は、そのコンセプトにしたがい、自然が豊かな場所に設立されている場合もあります。そのため、 公共交通機関ではアクセスしづらい場所にあることも考慮に入れる必要があります 。墓参りする人が少なからずいることも考えて、墓地を選ぶことも大切です。

樹木葬

まとめ

ここまで、樹木葬の方法や費用について説明してきました。
樹木葬は、まだ新しい埋葬方法であるため、実際に選択する場合は、家族や親戚など、周囲の理解を得ることが大切です。たとえ故人が樹木葬を希望していたとしても、樹木葬についてよく知らない家族などから反発を受けるケースもあります。

それでも樹木葬への関心が急激に高まっているのは、現代社会に生きる人々のお墓に対するニーズとマッチしているためです。樹木葬についてしっかりと調べ、周囲にも一般的なお墓との違いを説明し、同意を得たうえでお墓選びを進めることが大切です。

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監修・奥山晶子
監修・奥山晶子
株式会社むじょう 編集者
冠婚葬祭互助会に従事し、その後おもだか大学名義で「フリースタイルなお別れざっし 葬」(不定期)を刊行。現在は葬儀や墓など終活関連の記事を手がけるライターとして活動中。2012年より2年間、NPO法人葬送の自由をすすめる会の理事をつとめる。主な著者に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』がある。