【おくりびとのお葬式】納棺師による葬儀だから、数学ではなく国語を

【おくりびとのお葬式】納棺師による葬儀だから、数学ではなく国語を

【おくりびとのお葬式】納棺師による葬儀だから、数学ではなく国語を
【おくりびとのお葬式】納棺師による葬儀だから、数学ではなく国語を

「おくりびとのお葬式」を運営するディパーチャーズ・ジャパン株式会社の創業者、木村光希さんのお話を伺いました。ディパーチャーズ・ジャパン株式会社は、2013年6月に設立され、日本初の納棺士™養成学校である株式会社おくりびとアカデミーの葬祭部門として立ち上がった会社です。

納棺師としてご葬儀のお手伝いをする「おくりびとのお葬式」の立ち上げ当初の志から、現在に至るまで、直面した葛藤や悩みを赤裸々にお話しいただきました。

おくりびと木村さんとむじょう前田

前田:今日は貴重なお時間いただきありがとうございます。

木村:こちらこそです。今日は全然まとまってない話になってもいいですか?最近、他の葬儀屋さんのHPを見ているんですけど...客観的にみて、おくりびとのお葬式はコンセプトはあるけども、それが現状の発信では伝わらないと思っていて、これからどうしようかと悩んでいるタイミングなんです。

おくりびとのお葬式・立ち上げ当時の志

前田:なるほど。後ほど詳しくお聞かせください。まずはじめに、おくりびとのお葬式の立ち上げ当初の志についてお聞かせいただけますか?

木村:おくりびとのお葬式を立ち上げる前は、葬儀屋さんの協力会社として納棺師をしていました。お葬式の下請けは色々な職種があるんですけど、僕ら(納棺師)が葬儀をすることで、ご遺族に安心していただきたいと思ったのがきっかけでした。

そして独立して最初に始めた事業がおくりびとアカデミーです。葬儀屋さんの協力会社として納棺師がいるじゃないですか。納棺師を外注すると費用がかかるので、納棺師を内製化したい葬儀屋さんって結構たくさんあったんですね。僕がいた納棺師の会社から、葬儀屋さんに引き抜かれることもあったので、葬儀屋さんからすると自社スタッフにおくりびとアカデミーで学んでもらって、連れ戻すという需要があると思ったんですよ。でも、全く来なかったです。意外と来たのは一般の生徒さんだったんですけど...その事業は今も続いています。

おくりびとアカデミー

おくりびとのお葬式は尖ったコンセプトにしていて、おくりびとステーションとかおくりびとハウスとかみたいな名称でやっていました。小さい施設に葬儀屋さんがご遺体をお連れして、その施設が最後の美容室みたいなコンセプトでやってたんですけど...葬儀屋さんなのか、用途もよくわからない状態になった失敗はありましたね。

前田:そこから今の形に...?

木村:そうですね、結局家族葬だったんですよ。地方ではまだまだ家族葬って新しくて、30万人以下くらいの都市だったらまだ浸透してないって感覚がありますね。

前田:なるほど...納棺師としてできる事業を探した結果、お葬式に行き着いたのですね。

“普通の葬儀屋さん”になる決断

木村:正直言うと、やりたいことはすごくあったんですけど、それをやらない選択をしたんですよ。いわゆる普通の葬儀社になると。それで年間1600件くらいの葬儀ができるようになって、プロフェッショナルも出させていただいて、納棺師が葬儀をやる価値はあるんだと今は腹落ちしています。

そろそろ次の段階に進まなくてはいけなくて、普通の葬儀社ではないブランディングをしていく必要性を感じています。結局、納棺師とは何か、木村光希とは誰か、おくりびとのお葬式のコンセプトとは、というのはぼんやり伝えることはできたんですけど、もっと向き合わないといけないですね。

前田:もっと向き合う...

木村:お客さまのニーズに合致させたサービスをしっかりと打ち出していかなきゃいけないっていうのは強く感じますね。

前田:ご葬儀のお客様のニーズって結構分散してるじゃないですか。簡素で小さい式で早く終わりにしたいニーズもあれば、お金かけて大きいお葬式にしたいなど、ニーズの幅が広い業界だと思うのですが、おくりひとのお葬式さんの場合は、どういった願いや希望を持ったお客さんのニーズに合致したサービスを届けていきたいのでしょうか?

木村:規模感でいうとどれでもあるんですよ。規模感というよりも手厚く送りたいか否か、という判断軸になってきます。規模は大きくても手厚く送りたくない人もいるんですよ。手厚く送るとは何かというと、故人を綺麗にしたいとか、尊厳を持って送り出したいと思ってるかどうかですね。これは数字で現せる価値ではないので、この価値を伝えることの難しさを感じています。

前田:なるほど...規模を問わず、故人様の尊厳を大切にしたい方に向けたご葬儀、というのが貴社の強みになるのですね。

おくりびと木村さん1

葬儀屋の経営 〜数学から、国語へ〜

木村:そうです。だからこそ、自社のプロモーションの力不足を感じるんですよね。例えば、僕らはお化粧はもちろん、故人様のしわを取ったりもできるんですよ。肌の張りをつくったり、髪型もこだわったり。そのこだわりが一切伝わってないんですよ。そういう僕らのこだわりをもっと押し出していい状況になってきてるかなと思っています。

前田:なるほど、そうするとご葬儀の価格や規模が売りではなくなってくるのでマーケティングが難しくなるということですね。

木村:そうなんですよ。「価格・規模」を売りにすると数学的なマーケティングができますけど、「尊厳」とかが価値になってくると国語をやることになります。

マーケティングにお金をかけても空振りする可能性もあるし、すごいヒットする可能性もある。それは創業時にはできないんですよ。

だから数学的なマーケティングで王道のものをやり続けて再現性を担保していく。そこで出た利益でやりたいことに注力していく。今やっとこの段階に来れたという感じですね。ここまで5.6年かかりました。

おくりびとのお葬式HP

「納棺師による葬儀」の次

前田:最初は「納棺師が葬儀をやる!」という志を持って、0から1をつくっていたかと思います。納棺師による葬儀は、今では貴社の中で当たり前になり、創業当時の志は達成されたのかと思いまして...
これからの新たな志についてお聞かせいただけますか?

木村:今は納棺師が葬儀しますってことを言ってるだけ。付加価値は何かってなった時に、スタッフはご遺体に詳しいし、納棺の儀式も素晴らしいし、そんなことはもう普通になっています。もっとやれることをやっていかなきゃいけないっていう感じですね。全然満足してないです。理想形から考えると、10%もいってないです。

前田:なるほど...成長って限りがないじゃないですか、どこまで成長したらいいんですかね。おくりびとのお葬式に終わりはありますか?

木村:終わりはないとは言えないんですけど、勘違いしちゃいけないと思っているのは、やっぱり僕らがすべきことってグリーフケアなんですよね。葬儀はその手段でしかない。葬儀と納棺で利益を出しているから、グリーフケアのお手伝いができる、これが最大の価値だと思っています。例えば、グリーフケアの形が変化していくと共に僕らが変化して、その結果「おくりびとのお葬式」が終わる可能性は大いにあると思います。ですけど、ディパーチャーズ・ジャパン(おくりびとのお葬式の運営会社)として提供するサービスってのは変化していって、ご遺族に寄り添うサービスを作っていくっていう意識は持たなきゃなとは思ってます。

前田:グリーフケアを単体で?提供することってかなり難しいですよね。「ケアを提供する」という言葉自体しっくりきませんが...葬儀で関わらせてもらっているからこそできることがありますね。

木村:そうですね。今、グリーフケアを担えるのが葬儀屋なので積極的にやっていこうと思っています。これから先のことはわかりませんが、きちんと目的を見据えて、サービスを変化させていきたいですね。

おくりびと木村さん2

前田:グリーフケアを目的に据えたとき、今の葬儀は手段であると。勉強になります。今日は貴重なお話をありがとうございました!

おくりびとのお葬式について

会社概要:ディパーチャーズ・ジャパン株式会社
住所:〒104-0042 東京都中央区入船3丁目7-7 ウィンド入船6F
お電話番号:03-5566-8336
公式HP:https://okuribito-osousiki.com/
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※本インタビュー企画に料金は一切発生しません

編集後記

木村さんは業界で数少ない、“メディアによく取り上げられている葬儀屋さん”という印象がありました。切り取り方によっては綺麗事に聞こえたり、反発を受けることもあります。SNS上での批判や同業者からの冷たい視線も見受けられます。それでも、木村さんがメディアに出続けられるのは、痛みを引き受けた先にある、理想を信じているからだとお話を伺う中で感じました。綺麗事では変えられない現状を理解し、未来のために不本意な意思決定を下すこともある。そういった強さがあってはじめて「ブランド」ができ、そしてお客様の満足につながっていると感じました。
本企画は、葬儀屋さんのHPでは把握しきれない想いやこだわりを第三者目線で取材し、発信するメディアという位置づけですが、ここまで深く経営の哲学についてお話を伺ってはじめて、会社の良さが伝わるのかもしれない...と、企画そのものの伸び代を確認させていただく機会になりました。

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前田 陽汰
前田 陽汰
株式会社むじょう 代表
2000年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部オーラルヒストリーゼミ所属。葬送習俗の変化に関する研究を行う。研究内容が評価され2021年度SFC STUDENT AWARDを受賞。2020年5月に株式会社むじょうを設立し、距離と時間を越えて故人を偲ぶオンライン追悼サービス「葬想式」、亡き母へ贈る父の日のメッセージ展示イベント「死んだ母の日展、棺桶に入り自身の生を見つめ直す体験イベント「棺桶写真館」などの企画・運営を行っている。